11



熱を持つ。指に鈍痛そのものを掴んでるみたいな、飼っているような、そんな感じ。力の入らない手に、右手じゃなくて良かったなお前、と他人事のように言って、私はその手をぶらりと揺らした。
体育の授業で、久々に突き指というやつをした。
立海大の医務室は、学校の入り口の近くにあって、体育館のある場所からは随分離れている。今まで医務室を利用する機会はなかったので、取り分け何を思うこともなかったが、これは不便だなと思った。
正直場所さえ曖昧なくらいだったけど、真っ白な壁に何度も塗り直されたみたいなぺったりした冷たいドア。そこに医務室の字を見て、私はその扉を開いた。この、肺の中まで消毒されそうな独特な匂いは、中学生以来ではないだろうか。中は殊の外広くて、ベッドが三つのうち、ひとつにカーテンがかかっていた。誰か使ってるのかと、そっと扉を閉じると、柔らかい雰囲気の白衣のおばさんがくるりと振り返った。

「あら、どうかした?」
「ええと、体育のバスケで、突き指をして」

必要がないのに、先生が医務室に行けと言うから、と言うのは流石に飲み込んで、左手を差し出すと、彼女は「あらあらあら」と呼吸に掻き消されるくらいの声で呟いた。

「湿布か何かいただけないかと」
「あー……湿布ねえ、今丁度殆どなくって」
「あ、それなら別に、」
「ううん、確かちゃんとあるにはあるのよ。でも在庫が、ええとどこにあったかしら」
「はあ」

やけに渋い顔をした先生は、湿布でかぶれたりしないわよね、と確認するとひとまず氷と水の入った袋を私に手渡した。別に、今日はあとはレポートを提出したら帰るつもりだったから、わざわざ探すくらいならば手当ては要らないのに、と思ったのだけれど、私がそれを伝えるよりも前に彼女は在庫がしまってあると思われる奥の部屋に消えていってしまった。
途端に、医務室は静寂に包まれる。直立していた私は、そうしているのも落ち着かない気がしたので、おもむろにそばの丸椅子へ腰を下ろした。軋む音にだってなんだかどきりとする。
こんな時だからか、私は中学生の頃はよく医務室(その時は保健室と呼んでいたが)に居座っていたことを思い出していた。その時はいつも、自分はこの静寂に溶けてしまいそうな気がして、とてつもなく孤独だった。あまり楽しい思い出ではない。
手の中の、きんと冷たい水の入った袋が熱を持った指も、そんな思考も冷やしていって、私はそっと息を漏らした時、ふいに私の思考をもっとはっきりさせるような、静寂を破いていくような音がした。

「あ」
「……ええと、どうも」

ジャリッとそんな音。敏捷に開かれたカーテンの中には、くるくるした頭の男の子がいた。こう言ったらあれだけど、具合が悪いようには見えないので、もしかしたらサボるためにベッドで眠りこけていたのかもしれない。
彼は私を見るなり何かに気づいたみたいな、ハッとした顔をしたので、ぎこちなく頭を下げてみた。ちなみに私も私で彼の頭が気になって、視線だけは斜め上に向かう。
すると彼は掛け布団を慌てて頭からかぶって、目を細めた。

「……何見てるんスか」
「天井」
「ふうん」

絶対に嘘だと思われただろうけれど、彼は文句でも言いたそうな顔をしただけで、何も言わなかった。
どうやら彼は髪型にコンプレックスがあるらしい。布団を剥がして頭のはねをしばらく撫でつけていた。
私が、いつまでも戻る様子のない先生を気にし始めると、彼は、何を思ったか、そばにあった椅子に移って、それを転がしながらすっと私の前までやって来た。どん、と椅子同士がぶつかるくらい接近されて、私は思わず椅子ごと後ずさる。初対面の人間と関わるのはどうも苦手だ。
私を覗き込んだ彼の瞳はどこか鋭くて、なんとなく、仁王と似たものを感じさせる。たじろぐ私を他所に、彼は口元に弧を描いた。

「俺、アンタのこと知ってるぜ」
「……はい?」

何だか少し得意げな顔だ。その意味が分からないまま、私は貴方を知らないよと返すと「あっそう」と彼。だけど仕切り直すみたいにすぐ「俺は、一年の切原赤也」と名乗った。何だ、年下ではないか。
どこで私のことを? と、問うつもりだったけど、タイミングを逃して、しようがなく「二年のです」と話の流れに従った。

「ふうん、やっぱ二年なんだ」

彼はそう言ってにっと笑った。やっぱり、と言うのは、彼が私を知っているから出た言葉なのだろうか。そもそも彼と会ったことなど微塵も覚えていないのに、私の存在と、二年であるという事実をどこで知ったのだろう。
彼はさんね、と私の名前を覚えるように何度か唱えてから、すぐに視線は私の手元へ移っていた。

「突き指でもしたんスか」
「え? ああ、まあ、体育のバスケで」
「あれ、湿布とかしねえの」
「今在庫が殆どないらしくって、先生が奥の部屋に探しに行って、」

早く先生が帰って来ないかなと、意識を扉の向こうへやりながら、受け答えをしていると、彼もまた奥の扉を見遣っていた。しばらく沈黙が続いて、だけど切原君は、相変わらず私との妙な距離を保ったままだった。何だか簡単に自分の空間に入り込まれたみたいに、彼と私の間にあるスペースはとっても小さい。なんだか、今まで会ったことのある誰とも違う、変な人。そう思っていると、切原君が出し抜けに「痛い?」と尋ねた。
そりゃあここまで腫れていたら痛い。

「ふーん、湿布見つかると良いッスね」
「なくても良いよ」
「なんで?」
「今日はもうすぐ帰るし、家はこっから近いんだ」
「へー」
「聞いてねえよって言うね、すいません」
「いや、別にいいッスよ」

彼は私の言葉につかの間怪訝そうな顔をした。何かおかしなことを言ったかなと思った。だけど理由は分からぬまま、彼は「そう言えば」と話題をまた攫っていった。私は彼と話す気なんてちっともないのに、彼は黙らない。

「昔、怪我したら『痛いの痛いの飛んでけー』って、やられませんでした?」
「やられたと思う」
「あれって、よく分かんないスけど、効きましたよね」
「はあ」

痛いの痛いの飛んでけー。彼は酷くやる気の無い声で私の指にそんな呪文を唱える。「どう?」切原君が大真面目に私を見たので、私も大真面目に「全然効かないね」と答えた。口を尖らせる切原君。

「そもそも、これって、プラセボ効果と同じなのでは」
「プラセボ?」
「所謂、暗示というやつで、実際に効かないものでも効くと思い込むことで本当に痛みがなくなったりすること」
「じゃあこれって純粋さがないとかからないってわけッスね」
「まあそうだね」

さり気なく私は純粋でないと言われたなと思いながら頷くと、丁度奥の部屋から先生が顔を出した。どうやら探し物は見つからなかったらしい。やっぱり渋い顔をして、ごめんねえ、と首を横に振っている。切原君は、あらら、と肩をすくめていたけれど、完全に他人事のようだった。実際他人には間違いがないのだけれど。でも、私としては氷が貰えたから十分だ。
それから大袈裟に溜息をこぼした先生は、ふと、丸椅子にさも当たり前のように腰を落ち着ける切原君の姿が目に入るなり「ようやく起きたわね」と、口を尖らせた。幾分か投げやりな調子だ。

「お陰様でスッキリッス」
「そう、良かったわね。元気ならさっさと行きなさいな」
「えーでも、この人が俺と話したいって」
「言ってねえよ」

即答した。
切原君の白けた瞳がすぐさま私に向く。空気読めねえ、って思ってそうな目だ。別にそんなのどうだって良いけど。私はぴったりくついていた互いの椅子を離すように地面を蹴って、自分の椅子を後ろへ転がした。
そんな私の目の前で、先生は切原君の耳をぎゅっとつねりあげる。お袋と息子感が凄まじい。

「そもそも、いつもいつもサボりに来てあんた、真田君に言いつけるわよ」
「いででで、ちょ、そりゃないッスよ!」
「やっぱりサボりだったんだ」

先程までの調子付いた様子はどこへ行ったのか。彼はすっかり背中を丸めて入り口まで追いやられている。どうにもその真田という人は彼の天敵らしい。切原君は、くしゃっと顔を歪めてあからさまに不本意そうな顔をして見せた。ちょっと面白い。
私も湿布がないのなら長居する必要はないと思って鞄を掴んだ。

「もう行くの?湿布なくてごめんなさいね」
「いえ」
「最近湿布貰ってく人が多いから……」
「はあ」
「たとえばどっかのテニスサークルさんとかねえ」
「へえ、大変ですね」

先生の含みのある言い方。どうやら本当に困っているらしい。それにしたって、テニスなんてそんなにたくさん怪我をするのだろうか。私の隣で、素知らぬ顔をしている切原君に、テニスって危ないんだね、と言うと、彼は「それは知らなかった」と頷いた。だよね。私も女の子がやる優雅なスポーツだと思ってたから。
言葉を続けた時、切原君がふいに私の腕を掴んだ。まるでもう行こう、と言われているようだった。わざわざ彼と一緒に出ていく必要はないのだけれど、拒否することもないかと素直に続いた。「本当にごめんなさいね。氷水ならいくらでも取りに来て良いから」後ろで先生の声がして、扉がしまる直前、振り返りざまに私は頭を下げた。

「アンタこの後どうするんスか」
「えっ」

医務室を出てから、私は切原君の背中を追っていた。彼がどこに向かっているか分からなかったのだけれど、腕を掴まれていたからしようがない。どこまで行くのだろうな、と思っていたら、各学部の棟への通路が集合した中央のホールに来たところで彼がいきなり立ち止まった。俺はあと一コマ授業あるんスけど。とかったるそうな切原君。私は帰りますけど、なんて言ったら俺も、と言い出しそうな空気だったので、レポートを出しに行くとだけ答えた。南棟の4階、端っこの教授の部屋へ。

「へー。ま、頑張って」
「あー……切原君も」
「ん、超だりーけど」

パッと、腕が離れる。腕に伝わっていた温度が一気に冷えて、何だかすうっとした。
切原君は、頭をがっくり落としていた。授業に出るのが相当面倒らしい。まあ医務室の先生の話を聞く限りでは結構な頻度で入り浸っていることが分かるから、典型的に勉強が嫌いな子なんだろうな。単位は大丈夫なんだろうか。
別に今日初めて会ったような子だ。彼がどうなろうと知ったことではないのだけれど、私はそっと手を伸ばすと彼の額に指を当てた。

「え、なに、」
「怠いの怠いの、飛んでけー」

ぽーい。我ながらなかなか感情の込もらぬ声だったように思う。空へ逃した切原君の『怠さ』を見上げて「ホームラン」と訳の分からぬことを口走ると、ぽかんとしていた切原君が突然吹き出した。

「ぶは、アンタって変な人ー」
「左様か……」
「つうか何今の。全然効いてないんだけど」
「じゃあ切原君は純粋じゃないんだね」
「……もしかしてそれが言いたかった?」
「まさか」

大袈裟に肩をすくませる私に「ま、良いや」と切原君。まあ良いらしい。私は何となく、単位を落としたら可哀想かなと、思ったからやっただけである。

「なんか面白かったからとりあえず今日は授業出るわ」
「ほう、意味不明だけどそれが宜しいね」

頷くと、彼は「んー、じゃ、俺こっちだから」と北棟を指差した。私とは真逆の方である。立海大は敷地も学校としての規模も大きいため、サークルに入ってでもいないとなかなか他の学部の人と関わることはない。だから今回はもしかしたら私は貴重な体験をしたんじゃなかろうか。「多分もう会わないだろうけど、達者でな」ひらりと、私は突き指していない方の手を振ると、切原君が笑った。

「いや、またすぐ会うって」

彼はどうしてそんなことを言ったのか、もちろんその時の私には分からなかった。



仁王と会ったのは切原君と別れたすぐ後だった。すっ、と気配無く私の隣にいた仁王にあまりに驚いて、呼吸が止まる思いがした。彼は以前から神出鬼没だけれど、この状況下でそんなユーモアはいらないというか、今私はあまり仁王と話したくないって思っているのを分かっていないのだろうか。いや、分かっていても、むしろ分かっているからこそ話しかけてきているのかもしれない。仁王って私とは別の意味で性格が悪いから。

「こんにちは……」

消え入りそうな声で私は言った。
こんにちはって何だよ、と他人行儀すぎる挨拶が口から出たことを後悔する。仁王がどう思ったかは知らないが、彼も「こんにちは」と、それに合わせた。

、レポート出したか」
「えっ、あ、い、今から……」
「ふうん」
「……仁王は」
「今出してきた」
「そう」

そう。私はもう一度頷く。てっきり話したいことがあって私の隣に並んだのだと思ったけれど、彼はこれといって話があるわけではないらしい。私が何か話した方が良いだろうか、いやでも何故私が? そもそも仁王は私が行く方に用事があるのだろうか。だってレポートは出したんじゃ、そこまで考えた時、ごん、と額に鈍く痛みが走った。反射的につぶった目を開くと、目の前には壁があって、その壁と私の額の間には仁王の手が挟まっていた。

「何、ぼーっとしちょる」
「うあ、え、と、ごめん、なさ、」

階段はあっち、と仁王が半ば呆れた顔で言うものだから、私は体裁が悪くなって顔を俯かせた。ずっと名前を呼ばれていたらしいけど、まったく気づかなかった。これ以上一緒にいたら、ますます調子が狂う気がして、足早に彼のそばを離れようとすると、その前に彼が私の腕を捕まえた。さっきの切原君と同じだけど、こっちの方が私の身体を強ばらせる。

「やっぱりお前さん、今日は教授んとこ行くのやめとけば」
「……ど、して」
「さっき行ってきたとき、酷く機嫌が悪かったから」

そんな調子だと、憂さ晴らしに嫌味を言われてレポートも突っ返されるかもしれん。ぐい、ともう少し強く、彼の手が私を引いた。
何でそんなことを言うんだろうと、私は思った。私がどうなろうと仁王には関係ないのに。

「あと、それから」
「……」
「これ、どうした」

仁王が掴んでいた手を自分の目の前高さまで持ってくる。彼の視線の先には、突き指をして腫れたその場所で、私は「体育で突き指」と簡単に答えた。飛び出してしまうんじゃないかって、思うくらい心臓がうるさい。だって、私には仁王の考えてることがさっぱり分からなかったから。どうして友達じゃないって言ったくせに、友達みたいに振る舞うの。彼は偽物の友達なんだから取り繕う必要なんてないって言うけど、それでもやっぱりあんなことを言われたら私にはもう友達ごっこだって出来そうにないよ。

「何でこんな腫れとるのに湿布を貼らん」
「……医務室に、ないから」
「ふーん」
「テニスサークルの人が、たくさん使っちゃったんだって、だから、」
「……ふーん」

仁王は、俯く私を他所に自分の鞄の中を探り始めた。何を探しているのかと思えば、彼は中から湿布を取り出して、それを私の指にあてがったのだ。「使わんかったやつ」そう言って、それを素早く私の指に巻いてしまう。何で湿布なんて持ち歩いてるんだ。何で友達でもない私にくれるの。放っておけば良いのに、突き指に何で気づくの。分からない。仁王のこと、全然、分からない。唇を噛み締める。
私は彼の手を振りほどくと距離を作るように、一歩後ろに退がった。

「わからないな」

私の声は震えていた。突き指をした指を握りしめる。痛い、でも胸の方がよっぽど痛い。

「仁王は飽きたと言った。私との会話が無意味だと言った」
「それを先に言ったのはお前さん」
「でも仁王だって思ってたでしょ。暇つぶしで、気楽だからきっと私に付き合っていたんだろうけど、毎回こんなふうに私に喚かれていちゃあ面倒にもなる」

でも私はもう喚かずにはいられない。

「もうやめよう」
「……」
「友達ごっこ、やめよう」

仁王は何も言わない。怖くて顔も見れない。今まで彼を利用してきたのは私だ。皆が当たり前に持つ友人が欲しかった。だけど求めたことで、自分がまた傷ついたらと考えたら怖くて、どうせいつか裏切られるなら、そうなっても傷つかないくらいの立ち位置の人間にしようと、思った。
それでもいつの間にか、私は仁王に心を許していて、私の中の鍵はいつだって開きっぱなしで、だから、もうだめだ。もっと苦しくなる前に、この場所を逃げ出さないといけない。

「飽きたならやめよう。もともとそれができる繋がりだ。それに、私も仁王に振り回されてしまうのは嫌だ。……自分が言い出したことだけど、友達みたいなことされると、哀しい。頭が混乱する。だからもうやめよう」

本当は、仁王に友達になって欲しかったけど、散々利用しておいて、今更それを言うのはきっとおかしいね。私がこんなだから、周りからはどんどん人がいなくなる。今度は、もう、仁王まで、いなくなる。
湿布の巻かれた指にそっと触れた時、仁王が、ふっと笑みをこぼしたのが分かった。

「怖いことから逃げるために初めから自分の価値を下げて他人からの評価を考えないようにしてる。自分がしたいことも、してほしいことも全部思うだけ。本音を言う口はどこに置いてきたんじゃ
「仁王に何がわかるの」

胸につかえていた息を、吐き出した。まるで身体が沸騰しているみたいに熱い。
一方で仁王は静かに私を見つめていた。私ばかりがいつも感情的で、一人で迷走して、宙ぶらりんで、まるで子供のようだ。
「なあ、」と、彼が口を開いた。

、人間が人間たる所以って何かわかるか」

一体なんのことだろうと思う。それがこの状況にどう関係あるかはわからなかったから、私は黙っていた。黙って、自分の足元を睨みつけていた。

「今のお前さんにはない」
「じゃあ私は人間の出来損ないってわけだ」

仁王はその言葉には答えなかった。沈黙がそうだと言っているように聞こえた。
誰かの笑い声が耳の奥で響いている。人を貶めるような、不愉快な声。嫌な記憶だ。
呼吸が浅くなり、そこから逃げるように早足で歩き出した。彼の言った通り、今日はもうレポートは諦めてしまおう。
さっきまで大して気にならない程だったのに、腫れた指が、突然ずきずきと暴れるように痛み出した。それに、何だか胸まで締め付けられるみたいに痛い。人と関わるとすぐこれだ。うまくいかない。さっきまで無意識にできていたのに、息さえうまく吸えなくなる。
私はただ皆みたいに、普通にお喋りして、笑えればって、そう思ってただけなのに。いつもどこかで間違えてしまう。

「このできそこない」

子供の世界も大人の世界も、できそこないは嫌われる。でもできそこないから抜け出そうともがいていたら、――誰もが求める形の自分を目指していたら、いつの間にか周りからは本当に誰もいなくなった。あの時から私は何かを間違えたまま、生きている。

痛いの痛いの飛んでいけ。
どこか遠くへ、飛んでいけ。

何回だって唱えたけれど、ああ、やっぱり私はすっかり純粋でないから、誰もこの痛みを取ってはくれない。




←こっち げんかん あっち→

( 180330 加筆修正 )
( 151012 )