![]() 「おら」 「いでっ」 閉会式も終えた私達は神奈川へ帰るため、バスへと向かう。大勢の目の前で泣き顔を曝してしまった私は、冷静さを取り戻した今、自身がかなりいたたまれなくいるからそっとしておいて欲しかったのだが、それを阻害したのは丸井だった。彼は後ろから握りこぶしを私の頭に押し付けている。 「何が『大会に執着できない』だ。ばっちり悔しがってんじゃん」 「あーはははは何でだろうねえー」 「でもま、良かった」 とんとんと跳ねるようにして私の三歩程前に歩み出た丸井は、私を顧みてニッと笑う。何が?首を傾げれば彼は肩を竦めた。お前、昔すげえ捻くれてたじゃん?ああ、今もだけど、なんて…酷い言われようである。 「やっぱ、お前変わったよ」 「…」 「強くなったよな。色んな意味で。でも、幸村とか、跡部とか、あ…あと俺も、だけど、…とにかく、お前の事支えてくれる奴はいっぱいいるんだから、もう我慢しなくていいんだからな」 「…ああ、うん?」 どうしてこんな話になったのかよく分からないけれど、きっと丸井は丸井なりに私を心配してくれていたのだと思う。私は彼に頷いて見せると、丸井はでもな、と付け足した。 「テニス部で一番最初に友達になったの俺だし、」 「うん」 「一番最初に親友になったのも俺だし、」 「ああ」 「だから、いくら幸村がお前を気にかけてたって、跡部がお前を支えてたって、どんなことがあっても俺は、お前の親友の座は誰にも譲る気はないからな」 「え…ど、どうぞ?」 今日の丸井はどこかおかしい。何かを決めた様に、私をじっと見据えている。私は動けずにいると、ふいに「二人ともどうしたの?」なんてがひょこりと顔を出した。「ああ、か」と丸井の視線が私から外れる。 「別に何もねえよ。んじゃ俺先行ってるわ」 駆け出した丸井の背中を見つめて、私は小さくヘンな丸井、と呟く。もそう思うだろうと同意を求めたが、彼女は何も答えなかった。代わりに丸井を睨むように見つめていただけである。 「…?」 名前を呼べば、は今度はその眼差しを私に向けた。そして次に発せられた言葉は今までに聞いたことがないほど、ほの暗く、冷たいものだった。 「って、どんな事しても結局は誰にも嫌われないし、何より構ってくるれ人が多くて良いわよね」 さあ秋の記録が始まるよ (私にはその言葉の意味が、)(分からなかった) ←まえ もくじ 秋の記録へ→ ---------- 読んでも読まなくてもいい話。更新するって言ってしなかったお詫びですすいません。 120311>>KAHO.A |