![]() 赤也に握られたままの手をどうしようかと思案しながら私は頭の片隅で、今頃達はどこにいるんだろうとか私の事探してんのかなあだとか、恥ずかしさを紛らわせてなるべくいつもの自分を保てるようにとあれこれ思考を巡らせていた。赤也は相変わらずニコニコして祭を眺めている。そんなに楽しいのか。これで手さえ繋いでいなければ、私はムツゴロウの如く可愛いと赤也の頭を撫でているところなのに。よーしよしよし。 横目で赤也の様子を伺うと、彼は私の視線に気づいてへらりと笑う。何スか?なんて。う、可愛い…っ!よく分からないけどいつも以上に胸がぎゅううと締め付けられた。うええ、えっと、な、なんでもないよ。 「ヘーンな先輩」 「…」 私が変な理由が自分のせいである事を恐らく赤也は気づいているだろう。頭は悪くても勘は鋭いし、今まで散々女にちやほやされてきたんだ。疎いわけがない。いやはや良い性格してる奴らばかりが揃ってやがる。 それにしてもそろそろ手を離してもらえないだろうか。こんな所知り合いに見られでもしたら一生のネタにされてしまうし、もし派閥の方々に見られたらそれこそ問題になる。きっと私と赤也をくっつけようと奮闘するに違いないのだから。良い迷惑だ。舌打ちした所で携帯が鳴ったから、私はしめたと赤也に手を離すように促す。携帯の操作しづらいからさ、なんて。しぶしぶ手を解放した赤也にホッとしつつ携帯を開くと案の定からのメールだった。それにしても、どうして私はこんな便利な連絡手段があることを今の今まで忘れていたんだろう。彼女からのメールには『どこにいるのよ皆探してるわよ。切原君もいるの?』とあって、どうやら達は幸村達と一緒にいるらしい。文面を赤也に見せると彼は渋い顔をした。真田あたりに怒られると思ったのだろうか。私は返事をしようと携帯に指を滑らせた所で急に誰かに頭を叩かれた。 「痛いな、どなた?」 「どなた?じゃねえよ。皆探してたんだからもうちょい焦れよ」 「うええさん…と皆もお揃いで…」 私と赤也の後ろにずらりと並んだ皆に、私達は思わず肩をすくめた。皆どこかいらついてる様に見えたから恐ろしい。お前らのせいで祭全然見れてないんだけどとでも言いたげである。そんな目で見られても困る。そもそも赤也のせいで身動きが取れなかったんだから。そこんとこ分かっといてほしいね、うん。それに私からしたら皆が私からはぐれてったように思われるんだけど。ひとりごちたら幸村に、は?なんて睨まれて私はもう平謝りしかできなかった。 ▼ 私と赤也はかなりの時間皆とはぐれていた様だ。達と合流した後、辺りの祭ももうフィナーレだぜ的な雰囲気に飲まれて面倒な事に花火を見なくてはならなくなった。ていうか私まだわたあめしか買ってないのに。ちなみに皆は私達を探していた割にちゃっかりしっかり遊んでいたようで達に関しては金魚すくいとかまでやってやがった。このやろう後で金魚食ってやる。 「私の金魚食べるくらいなら学校の池の鯉でも食ってろ」 「さん酷い」 私の声にかぶるようにドーンと花火が上がって、周りは更にざわざわと騒がしくなった。ハッたかが花火で。そんなに見たいなら蝋燭でも振り回して見てれば良いよ。きっと炎の残像が綺麗だよ、ねえそう思うだろうと隣にいた丸井に同意を求めたらえ、それ何の呪い?と逆に聞き返された。 「それただの危ない奴だろい」 「それじゃあ懐中電灯でも良いよ。一人で振り回せば別に怪しまれないし」 「何が悲しくて夏の夜に一人で懐中電灯なんて振り回すんだよ」 「…まあ確かにやるとしても丸井ぐらいかあ」 「やんねえよ」 うえええ?首を傾げる私を見て丸井は私達の隣でそんなやり取りを聞いていた柳に、コイツどうにかしてくれと助けを求めた。しかし彼は今年も花火が見事だなと丸井の発言を花火より見事にスルーして、私は丸井が哀れだ思ったのはまた別の話。 恋愛未満の夜 (あれ、そういやジャッカルと真田は?)(花火見るための場所取りに行かせた)(かわいそうに) まえ もくじ つぎ→ ---------- ほんとは仁王を出してもっと進展させたかったのに。責めるならでしゃばってきたブン太を責めてくれ。 111129>>KAHO.A |