夏の記録:34皆に迷惑をかけまくった挙げ句、結局立海の担当に戻る事を許された私は、早速サボりに出かけた仁王の捜索に駆り出された。指令したのは勿論真田である。仁王の居場所の見当はだいたいついているので、別に駆り出されるのは構わないが、しかしながら今日帰るというのに、皆、現在進行形でテニスの試合を繰り広げてるとか意味不明過ぎる。迎えのバスが来るのは確か2時だ。なんでも、跡部ができる限りこの施設で練習ができるようにわざと遅くさせたらしい。ほんと、テニス馬鹿。 のろのろと階段を上がり男子の宿舎に入る。本当は一人で入っちゃいけないんだけど、今は皆外に出ているから入ることを許されたのだ。 ついさっき忍び込んだ赤也、仁王、丸井の部屋のドアの前まで来ると、とりあえずノック。案の定返事はなかった。試しにノブを回すとすんなりと開いたから私はやっぱり、と小さく息を漏らして中に足を踏み入れた。 「仁王」 「…ああ、お前さんか」 何をするわけでもなくただぼーっと窓の外を見つめていた仁王、視線だけ私に向けてかったるそうに口を開いた。今日は前日に比べ大分暑いからやる気が出ないんだろうな。私が言葉を発する前に、暑いのは好かん、とそっぽを向いたからそれが何よりの証拠だ。仁王はこういう所が子供だと思う。普段は殆ど自分の利益のために動いてる癖に、こういう時は後で真田に叱られると分かっていても我を貫く。 「まあ、もう閉会式始まるし、私は今日くらい休めば良いと思うけどね」 「俺も思う」 近くにあった椅子を仁王の所まで持ってくると、私はそれに腰をかけた。そんな私に、彼は苦笑して私の頭を撫でる。私が言わんとする事がバレたようだ。それでも自分から口にすることがなかなかできなくて、口ごもっていると、「丸井の事じゃろ」と仁王は呟いた。 「…あ、いやー…なんか、さあ。まあ、そうなんですけど」 「丸井が謝ってこないから気に食わない、と」 「…!何故わかる」 「お前さんの捻くれ具合は十分承知だからの」 確かにこの状況で丸井に謝罪を求めるのは酷な事かもしれない。でもさ、私的にはお互い謝って、ちゃんと仲直りしてこそだと思うんだよ。まあ自然に解決、とかもあるだろうけど、それじゃあ私損じゃん。 「だいたい今回の事は元はといえばそちら側に非があるわけで。私が謝った意味が自分でもよく分かってないんですけど」 「大分刺々しい」 「私を怒らせた張本人の謝罪がないのはちょっと調子乗ってんじゃねえぞみたいな?」 仁王は私の言い分に、そんな事俺に言われても困るんだけど的な視線を送ってきたが、私は構わなかった。「お前同じクラスだろうが何とかしろよ」「同じクラスとか関係ない」るせ。黙ってなんとかしやがれよ。 真田に仁王がここにいることチクってやるぞとついには脅しをかけると、彼は仕方がないと言うようにドアの方を指差したからそちらに向くといつの間にかそこには丸井が立っていて、私と目が合うと素早く目を逸らした。 「…いつからそこに」 「…閉会式の下りくらいから」 「それほぼ最初からって言うんだよ」 「…ああ、うん」 気まずい空気が流れたのは言うまでもない。仁王は愉快そうに笑ってるから後でシバこうと思う。 「…ま、とりあえず、私が言いたい事分かったよね」 「…それなりに」 「んじゃ謝れ」 「ええええすいませんでしたー」 そんな謝罪いらねえよ。舐めてんのかよ。謝って許されたら警察はいらねえよと文句を垂れまくると、彼はだから、と逸らしていた目を私に向けた。「ごめんって!」 「…」 「俺だってお前が無茶苦茶心配で、四天に取られちまうとか思ったし、だけどぱっぱらぱーだから」 「おい待てぱっぱらぱーて、」 「俺らが心配してんの気づかねえし、原西も大丈夫じゃない?とか投げやりだし!」 「…ソノちゃん」 「とにかくお前が嫌いだったらこんなこと言うわけねえのにが馬鹿で全然気づかねえからムカついてあんなこと言ったんだよごーめーんー!」 何コイツ。 気が抜けて、思わず吹き出すと、丸井は顔を赤くして私の頭をぶん殴った。ちなみに仁王はそんな丸井と私を写メって笑っていた。 「ほんとありえねえ!真剣に謝ってんのにの馬鹿仁王のクズ」 …照れ隠しにももうちょっとやり方があるだろうに。 笑うっきゃない (やっぱ丸井はガキだなあ) ←まえ もくじ つぎ→ ---------- たくさんコメントありがとうございます。 立海マネジの人気に嫉妬。 111002>>KAHO.A |