夏の記録:17

「ふぁあおはよう」
「おそよう」
朝から何の嫌みですか


合宿二日目の早朝。まだ誰も起きていないと思ってボサボサの髪のまま外に出る。誰もいないと思っていたそこには幸村がいた。
再び出かけた欠伸が引っ込む。おそようて、まだ全然早いじゃないか。
幸村は俺より早く起きて起こしにこなきゃとか正直めんどくさいこと事を言ってから私に手招きした。


「とかしてないの?ぐしゃぐしゃだよ」


幸村は私の後ろに回り、髪に触れる。とかしてくれるのかと思えば彼はぐしゃぐしゃ、と更に乱し始めたから慌てて彼から離れた。何すんだよ。いや、あははじゃないから。


「あ、てか幸村、昨日蔵石白ノ介君に聞いたんだけど」
白石蔵ノ介だと思うよ
「わかってるよ。んで蔵石君が」
「うん、全然分かってないね」
「いっだだだだ幸村痛い」


ぎゅーっと頬を抓る幸村はそれで?なんて話の続きを要求するからとんでもない奴だと思った。鬼…、鬼村あああ嘘ですけどね。嘘ですよ。マジではははは。


「で、白石が何?」
「あ、うん。私が四天の担当なんて聞いてないよ。初耳だ」
「だろうね。言ってないから」
「あ、そうなんだ。そうだよね。うん、…うん、ええええ


いちいちうるさいなあと言わんばかりの目で私を見た幸村は私に、立海と四天担当なんだよはなんてかなり今更な事を言いなさった。


「まあ頑張りな」
「ええええヤダよなんか変な人達いっぱいだし、毎蹴瑠なんだもんよー蔵石君とかマジ中二だし」
「…。そっか」
「え、うん。そう、です…けど」


何でそんな顔するの?一瞬寂しげに私を見つめたような、…気がするんだけど。あれ、気のせい?
彼を覗き込むと幸村はいつものように笑顔を見せた。えええなんだそれ気になる。


「…俺さ、
「早いじゃねえかお前ら」


幸村の言葉を遮って出てきたのは跡部だった。出たな指ぱっちん。おそようと言ってあげると何の嫌みだと頭をわし掴みしてきた。うえええ痛いいい。わし掴みっておま…、わし掴みはまずい。


「い、痛いです跡部ちょん」
跡部ちょんてなんだやめろ殴るぞ
「えー可愛いじゃん跡部ちょいででですいませんすいませんすいません


ひいいいい。おっかねえよ跡部ちょん。やっとの事で解放された私は頭をさすって跡部ちょんから離れる。これ絶対頭蓋骨へこんでるし。


「おお、おはようさん。何しとるん」
「ああ毎蹴瑠」
は、ん?誰。え、誰?俺?
「おいおいユウジ君、そこは『おうっ…てなんでやねーん』って入るとこでしょ」
「せ、せや。すまん」


ユウジ君にツッコミの指導をしていると、四天や青学、氷帝、そして立海メンツも起きてきたようで食堂に下りてきた。相変わらず騒がしいな。あーそういえば朝ごはんの準備してない。まあ平気かな。平気だよね。皆1食くらい抜いたって死なないよね。強いもんね。
まあ結局朝ごはんは青学の何とかさん達が作ってくれてたみたいなんだけどねさっすが。
とりあえず配るのだけはやろうとテーブルに食器やなんやを運んでいると不意に肩に誰かがもたれ掛かってきた。


「おはようさん」
はよ」
「仁王と丸井か。おはよ」


食器を片手に彼らに挨拶をするも、仁王が邪魔をするかのごとく私にしなだれかかってくる。ぐいぐいと背中で押してくる彼を押しのけると私は欠伸を一つ。えーじゃろーなんて眠そうに私にしな垂れかかってくるから丸井にヘイパスと渡した。いらねえよとか突っ返されたけど。
そんなやり取りを繰り返していると、誰かが名前を呼んだ。否、包帯少年だ。


「ああ、おはよう蔵石君」
白石や
「はいはい。で?」
「…ああせや、良ければさん、朝食俺らのところで食べへん?」
「は?」


蔵石に「は?」返しをしたのは丸井だった。そんな君に「は?」どうした丸井。そして何でそんなに敵意むき出しなのねえ。あ、いや分かるよ。彼中二くさいもんね。危険を察知したんでしょうよ。え?白石は中三だぜって…、そういう意味じゃねえよ。


は俺らと食うから。な?」
「うええいつそんな約束」
「だよな?」
「…え、ちょっと丸井いつから横暴星人ユキムラーに似てしまったんだい」
何か言った?
「べべ別にー」


幸村は地獄耳だと心得た。私のレベルが1アップ。テンテレテン。はスルーを覚えた。


「わりいね。私はソノちゃんと食べる約束したの。合宿前に。ねえソノちゃん一緒に食べないー?」
え?いつ約束したって?
「思いっきり目の前で約束しとるな」
と朝ごはん?は、無理」
しかも断られたあああ
「つかよく俺らの前で堂々と約束できるよな。せめて小声とかで」
「約束してるなう」
「つぶやけって言ってんじゃねえよ」
「ソノちゃんにフラれたな、う…う」


うわああああと頭を抱えてショックを体全体で表現していると、けらけら笑い出した丸井が私の肩に手を置いた。「ドンマイ」うぜえええ。私はバシッと丸井の腕を振り払うと近くにいた少年を捕まえて、そこの僕一緒にご飯食べようじゃんかと声をかける。だって四天とご飯やだ。蔵石君とか中二だもんよ。


「…は?俺すか」
「そうそうそこの俺。あ、君どこ中?一緒に食事エンジョイしちゃお、って君いかついなピアスか
「はあ、」
「お、財前やないか」
「…はようございます」


ぎょぎょ魚。蔵石の知り合いかまさか四天じゃないだろうなってああ四天ですかそうですかこんのピアスがああ。お前ら反骨精神の象徴か。よし覚えたぞ四天宝寺は中二病と。


さんが財前と食べたそうやからうちらんとこ来いや。丸井君悪いけどさん借りるで」
「えええ借りられちゃった」


やだとそっぽを向くと丁度ユウジ君と目が合った。「あ、ユウジ君、君は何中?」「食事中や」馬鹿野郎見れば分かるわ。学校どこか聞いてんだよ。


「いや学校もジャージ見ればわかるやろ」
な、そんなテクが!
…テク……?
「そう、テクがっておま、そのジャージ蔵石君と同じじゃねえか。四天かよ。中二風情がああ。何この合宿、四天しかいないのかな、ねえ」
何でやねん


再びうわあと頭を抱えていると幸村が早く席につけと急かしたから私はジャージを肩にかけて翻すその背中に突撃した。一緒にご飯食べちゃおうぜええ幸村ー。




愛されてるとも知らないで
(体当たりなんていい度胸だね俺を敵に回したいの?)(ひいい)

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どんどん四天と絡ませていきます。しばらくは四天よりかも。
110507>>KAHO.A