夏の記録:04

が不幸になるのを見守る会」
ぶっ…


緑茶をふきだした私は慌てての方を見た。彼女は汚いなあなんて眉をしかめる。いやいやそれより今なんて?あなた今なんて?それってあれですよね、ソノちゃんが結成したろくでもない会ですよね。


「アンタとんでもない奴らに目つけられたわね」


はすごく他人事みたいに(いや他人事だけど)パンをもしゃもしゃ食べながら呟いた。
私はそんなさんをまじまじと見つめる。


「あの、その会をどこで、」
「部活の友達が言ってたのよ。女子の組織らしいわ」


おおっぴらに話してる癖に男子は誰ひとり知らないのよね。まったく誰が裏で手を引いてんのか、と頬杖をつくにボスは原西ソノミであることを口にしかけて、やめた。何か後が怖い。
…にしても流石柳が認める頭の良さを持つ子だけはある。悪知恵をフルに活用してテニス部の耳には絶対入らないようにしてるんだな。


「私圧力かけてみた」
え、何その圧力鍋買ってみたみたいなノリ
「圧力かけて、不幸の会は昨日から『を見守る会』に変わったから」
「ええええ」


何故名前だけ変えた。というかあんまり変わってねえし。どうせならそんな会潰してくれた方が良かったんじゃないか。名前なんて変えたって根本的な活動内容は変わらないだろう。どうせ結局はテニス部と私をくっつけてお先真っ暗パラダイスなんだろ。


「ちなみに私も入ったから」
こんの馬鹿野郎
何?何か言った?
「空耳だね、うん。空耳だ」
「そうよね」


怖かった。怖かった。幸村に似た何かがあった。あれかな、は女神の子なのかな。違うな、神の娘か。つまり二人は兄妹?二人はプリキュア!…ってそんなことはどうでも良いんだよ。問題はさあ、ほら、が何派閥か。


「私は幸村君派閥」
「え、ええええやっぱり兄妹だからか。兄を支持するんだね神の娘」
「…は?」
こっちの話です!


やべえええ、心の負担が増えていく。こういうの何て言うんだっけ。ま、…マインド…、マインドの負担うん絶対違う。


「まあ結局の所、私は誰とでも良いんだけどね。皆いい人だし。その中で幸村君が一番良い人だけど」
それは違うぞさん
「あ、幸村君がこっち来るよ。おーい幸村く」
呼ぶなよ!さようなら


とりあえず私はC組を飛び出したのは言うまでもない。



本日の午後練では合宿についての話し合いを部室ですることになっていて、そこにはまだまだ先の話なのになあなんてため息をつく私がいた。


「は!?俺は反対!」


丸井が机を叩いて立ち上がる。どうやらソノちゃんをお手伝いとして合宿に連れていく事に反対らしいよ。手伝いの説明の関係で一緒に部室にいたソノちゃんは顔をしかめた。私はそんな彼女の肩を叩いて気を落とすなよ、なんて飴を差し出したらいらねえよとぶたれた。


「私が不満なら他を当たっていただけるかしら。一応私はアンタ達のだーい好きなマネージャー推薦なんだけどね」
「いや別に推薦はしてないよ。が無理だったから仕方なくさー」
お前もう黙ってろ
「うええ…」


しょぼんと口を尖らせて机に鉛筆で落書きを始める。これは真田の顔。これは幸村の顔。これはジャッカルに髪の毛が生えたバージョン。これは丸井がガムを「落書きとはたるんどる」ごめんなさい。


「えー、てかさーてかさー、何で皆そんなにソノちゃん嫌がるの」
普通ならお前が一番嫌がるはずなんだけどな


丸井がじろっと私を見てきたから睨み返してみたらため息をつかれた。何でだ。
どうしてかな、とソノちゃんに理由を尋ねていると幸村は私と彼女の会話を遮る。おいこら今私はソノちゃんと、…すいません。何でもないよ、良いよ、話して。


「原西はやる気はあるのかな」
「やるからにはきちんとやるわ」


ソノちゃんの呼び方が呼び捨てになってた。こえええ。
柳は相変わらずノートをパラパラめくりながら原西でも大丈夫だろう、なんて口を開く。私もそう思うよ。プライド高いから仕事は完璧にこなすよソノちゃんは。


「まあそれなら俺は良いよ。皆は?」


幸村の言葉に皆はそれで良いと頷くが丸井だけは顔をしかめたまま、うんともすんとも言わなかった。嫌か、ブン太、と幸村が問い掛ける。やだと丸井。よくもまあ本人の前で良い悪いが言えるよなと思う。ソノちゃんはまったく気にしてないようだけど。


「別にもうには何もしないわ」


してるくせに。変な会立ち上げた癖に。…なんて言わないけど。
ソノちゃんの言葉に丸井は渋々承諾して、話し合いは終了し、ソノちゃんも含め部員は外に出たがその場に丸井だけが残った。私は皆と外に出かけて、止まる。


「まだ割り切れてないんだ。だから器が小さいって言うんだよ」
「…俺はお前が心配なんだよ」
「ふうん」


よく分からないけど、ぎゅっと苦しくなって、でも何だかちょっと温かくて、最近よく起こるこの現象にはうんざりしていた。頭をガシガシかいた私は丸井に小指を突き出す。


「じゃあ何かあったら一番最初に丸井呼ぶから」


それでもう割り切れと言うと、頷いた丸井も小指を出したから思わず私はふきだした。




どんだけいい人?
(丸井って可愛いね)(は!?)

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あああ、丸井がでしゃばる。
もうちょっと他のキャラと絡ませたいなあ。
110323>>KAHO.A