夏の記録:02

梅雨っぽくじめじめした日々が続く6月のある日の朝練。
特にやることが無かった私は部室で日誌をカリカリと書いていると、隣で何かの資料を見ていた幸村がふと顔を上げてコチラを見たから私も顔を上げる。


は青学と四天と氷帝、どこが好き?」
「おしるこが好き」
ふーんそっか。じゃあをおしるこの中に突っ込んじゃうよ
「冗談です」


選択肢にあるものから選んでね、なんて笑顔を向けられてちょっと怖かった。
それにしても急に何なんだろう。私は首を傾げるが幸村は私の返答を待っているようで、持っていたシャーペンの頭をこめかみにぐりぐりあてて考えてみる。


「うーむ私は、」
「うん」
「どこも同じ」


一応立海が一番だから、と答えると幸村はほんのちょっぴり嬉しそうに頬を緩ませてからそう言うと思った、なんて言った。何だかまたむず痒いぞ。これは何なんだろう気持ち悪い。


「で、まあこんなこと聞いたのは夏休みに青氷立四天で合宿をやるからなんだけど、」
「へえ」


そういや去年真田が騒いでた気がする。楽しみだーなあ、と思ってもないことを言ってみると幸村に苦笑された。
それで、何でさっきの質問に合宿が関係があるかというと、どうやらその4校の中でマネージャーやお手伝いを連れて来れるのが我が立海と青学だけらしい。つまり手伝いが足りないから立海のマネージャーである私と、青学のお手伝いさんとで他の学校の手伝いもしなくちゃいけないということらしい。氷帝とかマネージャーやりたがる人は沢山いるけど、ミーハーばっかで連れて来れないんだってさ。どんだけモテんだよっつーね。


「だからは大変かもしれないけど、ウチの他にもう一校マネージャーをやってほしい」


それにどうやら青学からくるのはただのお手伝いだからマネージャー業に馴れてない人だそうで、手伝えるなら青学の手伝いもして…ってちょっと無理があるよ幸村。
まあそれで最初にどの学校が良いか聞いたのか。
もうどこでも良いよとそっけなく答えた私は再び日誌に視線を落とすと幸村は少し唸りながら俺の考えとしては、と資料を机に置く。


「立海からも意外にもう一人、誰かお手伝いを連れて行きたいところなんだよね」
「ふうん」
「それでの受け持つ学校が減るわけじゃないけど、負担は減ると思う。が他のところに付きっりになられても俺らが困るから。手伝いは多い方がいいし」


まあ私の負担が減るに越したことはないよね。いっそ私合宿に行かなくて良いんじゃない?皆困れふははとか笑ってみせたら笑えないよと幸村に笑顔でチョップをかまされた。笑ってるじゃんか。
あんまりおかしなことを言うと幸村にマジでおしるこの中にぶち込まれてしまいそうだったから私はもうそれ以上余計なことは言わないことにしたけど。


「妥当なところとしては、さんかな」
「私もがいいー連れてく」
「まあが聞いてきて。俺らより、の方が話しやすいだろうし」
「やいやいさー」


は気が回るし私より色々と出来るからね。あの子器用だもん。多分私の負担は半分くらいになるんじゃないだろうか。
つーか合宿施設ってどんくらい大きいんだろう。4校集まんだからかなりデカイだろうな。つまり氷帝の指ぱっちんの人が主催なんだろう。やるな指ぱっちん。

日誌を閉じて幸村の方を見て指ぱっちんをしてみた。まあ実際は出来ないから口で「ぱちーん」なんて言いながら指を動かしただけだけどな。


「俺様の美技にぱちーん」
何、お前俺を馬鹿にしてるの?
「してますん!…やらかした
「良い度胸だね」


ガッと頭を掴まれて半泣き状態の私はすいませんを連呼。噛んだだけじゃないか。というか私は何故肝心なとこで噛むんだろう。馬鹿なのかな。馬鹿なんだな。
ていうか、このまま私頭握り潰されちゃうのかな、ぐしゃってうわグロッそしたら合宿は私がいなくて困るんだろうな困ればいい。ふはは。…やっぱりおしるこにぶっ込まれるんだろうか。ぐしゃってした私をおしるこに投入とか極悪非道だ。鬼…、呟いた言葉に確実に幸村の手の力が強まった。
え、まさか本当に潰さないよね、常人に出来るわけないし、…あ幸村は神の子なんだ。
神の子だから人間じゃなくて、神の人間、…あれ何かもうだんだん分かんなくな「…お前ら何してんの」丸井だ。


「ああちょっとスキンシップ」
スキンシップ!?意味分かってるの!?ゆきむイタタタタ雪印!
「…」


雪印とか叫んじゃったよ。丸井が私に憐れみの目を向けながら一応助けてくれた。
だいたいスキンシップっていうのは肌と肌との触れ合いによる愛情の交流の事で今は愛情の行き来が微塵も無かったぞ。微塵も無かった。大事だから二回言った!


ってさ、からかうと面白いよね」
からかうレベルじゃないよ今のは殺人未遂だよねえそう思うだろ丸井
「は…俺に振る!?いや、俺は…ゆ幸村の味方だし」



誰か……!




動いてますかー
(が完全に沈黙した)(面白いからこのまま部室に閉じ込めようか)(やめれ)

←まえ もくじ つぎ→

----------
ヒロインと幸村の絡みが好きだ。

110320>>KAHO.A