春の記録:04「なあー何か面白いことねえ?」幸村と柳が試合をしていて、私は記録をとるべくノート片手に試合を観戦しているといつの間にか赤也との試合を終えたらしい丸井が私の隣に立っていた。私は目の前の試合を指さして「面白いじゃん」と一言。 「テニス以外で」 「うーん」 唸るが別に何も考えてはいない。めんどくさいから。あ、柳にポイント入った。メモメモ。 幸村と柳の試合はなかなか見れないもので、自分の試合が終わった部員は幸村達の試合が行われているこのコートに集まっていた。それにしてもギャラリーの数が多い。そんな中の一人である赤也も、丸井に続いて近くにやって来た。「あ、そうだ面白いといえばさ」私がふと思い出したことに丸井が反応を示す。 「今日の占い丸井最下位だったよ。もう超ウケる」 「どこがだよ」 丸井にツッコまれてけらけら笑う。あれ、丸井って天秤座だよね?天秤座残念!ふふんと鼻歌を歌いながら記録をとっていると丸井が首を傾げた。「ああ?ちげえよ」って、あれ?「俺牡牛座」「へえーそうなん…ええええ」嘘だろ。衝撃を受ける私の横で、その時何故か赤也の手がひょろりと上がった。 「…俺天秤座っス」 「ええええ」 ごめんよ赤也。そんなつもりじゃなかったんだけど、うんほんと。なんで丸井じゃないんだよ、赤也かわいそう、わしゃわしゃと赤也の頭を撫でてやると、丸井は俺の方がかわいそうなんですけど!?なんてヒステリーに騒ぎ出す。うるさいうるさい。 「聞きたまえ丸井。全国の天秤座の人に何の非もないわけだよ」 「全国の牡牛座の人にも何の非もないだろうが」 「まあそうなんだけど、それは置いといて」 「いやいや置いとくなよ」 さて、そんな言い合いをぎゃあぎゃあしていたら真田に叱られるのは目に見えているわけで。案の定そのすぐ後に真田からの喝が飛び、私は肩を竦める。「ほら丸井怒られた」 「お前のせいだろぃ!」 「え、ちょ…真田あああ丸井が記録とるの邪魔してくる!」 「丸井たるんどる!グラウンドでも走ってこい!」 「えええ!?」 はん、ザマミロ丸井!ニヤついてたら丸井に睨まれたからもう一発真田に言ってやろうと息を大きく吸ったら丸井は慌てて走りに行ったのでドヤ顏で彼の背中を見送った。 正直、ふてくされた丸井はランニングなんてふけると踏んでいたのだけれど、マネージャー仕事が暇になってからグラウンドを覗きにいけば、丸井は存外真面目にグラウンドを走っていて、そりゃあもう赤い髪が盛大に目立ってたわけだ。仁王もそうだけど、初めて会った時自己主張激しい頭だなって思ったくらいである。彼は私に気づくと「のバーカアーホドジ間抜けー」なんて今の小学生でもきっと言わないだろう貶し文句を歌に乗せてぶつけてきたので苦笑しかでない。 「そんなに怒らなくても良いのに…」 ランニングの応援とごめんねの意味を込めて投げキッスをしてやると、丸井は奇声を上げてその場に倒れたので本当に失礼なやつだと思う。苦しんでいるというよりヤツは笑っていやがる。おのれ。 「柳生さんよ、最近の若者は難儀だよ」 普通は女の子の投げキッスとか喜ぶでしょうよ。私は喜ぶよ。たまたま通りかかった柳生にそう言って首を傾げると彼は苦笑して「そうですねえ」とまるで私の方が難儀な奴だと言わんばかりに「難しいです」と繰り返した。 だってしょうがないじゃないか (面白かったんだから) ←まえ もくじ つぎ→ ---------- ブン太寄りになってるような、いやまさか。 110110>>KAHO.A 131224 加筆修正 |