connect_04絶対的 ペシミズム 「あー切原氏じゃないっすかー、どしたのー?」 こんな特徴的な喋り方をする奴は俺の知る限りでは一人しかいない。佐熊遥だ。1限目が終わった後の休み時間に7組の教室に訪れた俺は遠慮がちに教室を見回していると目的の人物であるを見つけるより先に後ろから佐熊に声をかけられた。 振り返ると彼女はやっぱり「恋たる彼氏」のパックジュースに差したストローをくわえている。 「あ、欲しいっすか」 「…いらねッス」 「まあ遠慮せずに」 教室に入って行った佐熊は鞄の中からパックを出して俺に押し付ける。…ハッキリ言ってマジでいらない。 何かパックに描かれているキャラクターが無駄にキラキラしててうぜえ。 「そうだ。今氏いねっすよ」 「…別に先輩を訪ねて来たなんて一言も、」 「違うんすか」 「いや、違くないッスけど」 ちゅるるーとジュースを吸う佐熊は「まあ入りなよ」と俺を7組に引っ張り自分の席の前の人の椅子を勝手に持ってきて俺に勧めた。 「氏は真田氏に連れていかれたっすね」 ふいに喋り出した佐熊に俺ははあ、と答える。「足引きずってたかんね。真田氏が無理矢理保健室に連れてったぽいっす」と次の授業の準備をしながら佐熊は言った。 「…へえ真田副部長が」 「仲いっすねーあのふたり。真田氏はいつも氏気にしてる、うん」 何故かニヤニヤしだした佐熊を怪訝に思いながらそうですかと適当に相槌を打っていると「赤也じゃん、何してんの?」なんて声が降ってきた。丸井先輩だ。 「出たかリア充」 「お前な…」 「何でもいいや。丸井氏もこれ飲めばいっすよ。一日一本元気に行こう」 「いらない」と呟く丸井先輩の事は気にしないで無理矢理手渡すと佐熊は俺に向き直った。 「ところで、保健室に無理矢理連れてかれた氏とか何か響きえろくないっすかー」 「…は?」 「無理矢理と保健室のコラボやばいっすね、不健全な匂いがす」 「お前ちょっと黙れ」 丸井先輩が佐熊を叩くと彼女は不機嫌そうに丸井先輩を睨んで再びストローに口を付けた。 ていうか何で俺ここにいるんだろう。クラスに帰りたい。 俺がため息をついた時、佐熊が俺の肩を叩いた。彼女が指差す方を見るとと副部長がいる。 「真田君迷惑かけました」 「いや、あまり心配をかけるなよ」 へらっと笑うは副部長と別れると包帯が巻かれた足を引きずりながら教室に入ってきた。「大丈夫か?」なんて丸井先輩が声をかける。 「大丈夫大丈夫。…あ、」 は俺に気づいて声を上げた。俺はとりあえず会釈をする。 「えーと、朝の…あれだよ、えー…ワカメ」 「お前微塵も覚えてねえじゃねえか」 ぶっと丸井先輩がふき出した。マジでぶん殴りてえこの先輩。舌打ちした俺はガタンと立ち上がるとは申し訳なさそうに俺を見た。 「私に『繋がらない』だろう人の名前は覚えられないんだ」 何だコイツ。マジで申し訳なさそうに言ってるところがうざい。隣でけらけら笑いながら「氏酷だよ。こくまろカレー」とかわけわかんねえ事言ってる佐熊もうざい。 「赤也、気にすんなよ。こういう奴らだから」 「気にしてませんし」 無駄に俺に気を遣って慰めてくる丸井先輩ももっとうぜえ。だいたい何だよ『繋がらない人』って。わけわかんね。 帰りますと先輩達に背を向けた俺はとりあえずずっと手に持っていた恋たる彼氏のパックジュースのストローをくわえて廊下を闊歩する。 一口飲んで立ち止まった。 「…うえ、まっず…」 (切原氏に謝った方がいっすよ)(何で?)(氏を心配して訪ねてきたみたいだからね、うん) もどる もくじ つぎ ---------- あれ、何かとんでもなく、需要ない…? 110317>>KAHO.A |