connect_03接し方が わからない やばいこのままじゃ遅刻する。 チャリを乱暴に引きずり出した俺はそれに飛び乗り力の限りペダルを漕ぐ。まだ午前中の癖に夏のギラギラした太陽の光が降り注いできやがって、早くも汗が噴き出しそうだった。まあチャリに乗ってるから吹き抜ける風のお陰で大分涼しいけど。 携帯で時間を確認するとぎりぎり間に合いそうな事に気づいた俺はチャリの速度を落とした。 「何しとるか遅刻だぞ馬鹿もん!」 「ご、ごめんなさい今出ます!」 ふいに何処かからそんなやり取りが聞こえたと思ったら丁度通り過ぎようとしていた家、というか道場みたいな所からが飛び出してきた。(家ここなんだ。ふーん) 通り過ぎていく俺をその場に佇んで目で追うは急に走り出す。 「ちょ、そこの!ワカメ!チャリ漕ぐワカメ!」 「誰がワカメだよ」 「何でも良いから止まって!乗せて!」 「はああ?」 誰が乗せるか。 そう吐き捨てるように言ってスピードを上げようとした瞬間、チャリに追いつきかけていたはチャリの荷台に手を伸ばし、がしりとそれを掴んだ。え、何コイツ。離せよ。 「うわスピード上げないでよね!足がついていかないっ」 「アンタが俺について来なくちゃいけないなんて事微塵もねえよ」 「マジで乗せてお願い!もし乗せ、どわっ!」 べしゃっと何かが倒れる音と共にチャリが少し軽くなる。つまり荷台を掴んでいた手が離れたということだ。チャリを止めて後ろを振り替えてみると案の定は道路に俯せで倒れている。何か笑えた。 「痛い」 「でしょうね」 ヨロヨロと立ち上がろうとするの腕を掴んだ俺は彼女を立たせてやって、チャリの荷台の方をに向けてやる。彼女はキョトンと俺を見つめていたがすぐに笑顔になって荷台に飛び乗った。 「ワカメ最高!!」 「うおっ!?」 当たった。背中に今当たったから。お願いだからそれ以上近付くなマジで。…とは実際には言えねーから黙ってチャリを漕ぎ出す俺。これだけで反応するとか我ながら情けねえよ。 「ねーねーワカメー」 「だからワカメじゃねえって言ってんだろ!」 「えー?」 「だって私君の名前知らない」と続けたの言葉をしばらく考える。頭に入ってこなかったからだ。ああ、そうだコイツ俺の事知らねえし、俺も名のってなかった気がする。あれ、でも一回丸井先輩が俺の名前呼んでた気がするけどは忘れてそうだ。 「切原ッス。切原赤也」 「へー切原ね。よし多分すぐ忘れる」 「いやいやいや忘れんなよ」 「だってもう関わらないでしょ。覚える必要ないよね」 何か見かけによらず冷たい考え方の人だと感じた。とりあえずまあそっすよねー、なんて返す。 しばらくお互い黙っていたから俺はセミの声に耳を傾けながらキコキコとチャリを漕いでいたら、がふいに俺の背中にトンと額をぶつけた。 ちょっとだけ心臓が跳ねた。こんなの今までに一回も体験したことねえから緊張する。 「何かさー」 「…は、はあ」 「カレカノみたいじゃない?」 「…は!?あ、いや」 立海の校門をくぐり、チャリを止めるとは跳ねるように降りて俺を見た。「ありがとう。助かったよ」にこりと笑うに何かよく分かんねーけど心臓がきゅっとなって、ああ俺絶対おかしい、なんて頭をかく。 その時HRの5分前の鐘が鳴って、それに反応するようにはクルリと背を向けて校舎に入って行った。俺がチャリを持ってなかったら自転車置場になんか寄らずにと途中まで行ってただろうに。 「…なーんてな」 苦笑した俺はもう一度の後ろ姿を見て、ため息をつくと彼女が足を庇いながら歩いていることに気づいた。さっき転んだ時捻ったのだろうか。 「…まいいや。どーせもう関わんねーんだろうし」 さっさとチャリを置いてしまった俺は汗を拭って校舎の中にかけて行った。 (…やっぱ後で足の様子見に行くか) もどる もくじ つぎ ---------- 赤也かわいい。 110316>>KAHO.A |