先輩の実力の話01
何をどうしてこうなったのか、現在私は出水と米屋に両腕を捕らえられて、本部の廊下を延々と引きずられている。 多分、先程の彼らの口ぶりから私はこれからランク戦に付き合わされることになるのだと思うのだけれど、先の話をする前に、簡単にほんの数分前へ遡ることにしよう。 私、は風間さんのそばにいることが生きる楽しみのひとつと言っても過言ではない。 彼も多分それを察していて、いつもなら何も言わないはずなのに、今日ばっかりはどういうわけか私が風間さんの後をついて行こうとしたら、暇なら誰かと遊んで来いなんて、風間さんはお母さんみたいなことを言った。せっかく本日の防衛任務が終わって、自宅に帰るも風間さんに付きまとうも自由な時間がやって来たというのに、意地悪である。 「意地悪もなにも、俺はこれから隊長会議だ。悪いがお前に構ってやれないぞ」 「えっ、把握してませんでした。一生の不覚」 「そういうことだ。帰るか、菊地原あたりと遊んで来い」 「きくちはら……」 風間さんの台詞に、私の頭の中の菊地原が、顔を顰めていた。いつものことではあるが我のことながら切ない。加えて、どうやら今日菊地原は学校で気に食わないことがあったそうで、任務中、頗る機嫌が良くなかったから、きっと余計に私と遊んではくれないだろう。 菊地原は一体どうしたのか、試しに歌川に聞いてみたりはしたものの、私には言いづらいことなのか、濁されてしまった。何だ、男の子特有の悩みか。そうなのか。茶化すように言ったら菊地原は「違うし、少しはこっちの身にもなって欲しいよ」なんてまるで私が悪いみたいな剣幕で言ってきた。だから私は、今日は彼はサッサと帰って寝るのが良いと思って、彼には必要以上に絡まなかった。先輩の優しさである。そういうわけで、残念ながら、菊地原と遊ぶのは今日はなしだ。 しかし風間さんに言われて最近菊地原と模擬戦をやっていないなあということに気がついた。風間さんもどうやらそういう意図で言ったらしい。 「たまには手の内が知れた奴とやるのも勉強になるぞ」 「でも菊地原今日疲れてましたから」 「確かにな。が何かをしたんじゃないのか。そう言う口ぶりだったぞ」 「え、やっぱりですか。でもまるで心当たりないんですよね」 「まあ、文句があるなら言って来る奴だからな」 「ですよね。でも気にかけときます……」 確かに、菊地原は言いたいことを我慢するような奴ではない。特に私に対してなんて、とりわけ遠慮がないのだ。私はそれを彼が心を許しているからだと勝手に解釈して心の中で愛情表現と呼んでいる。菊地原の言う、思うのは自由と言うやつだ。 そんなことより、次に菊地原に会ったときにどう接すれば良いんだろう。やっぱりもう少し距離を置くべきか、三上辺りにそれとなく理由を聞いてもらうか。ううん。 私が唸るそばで風間さんは、ふ、と笑みを零していた。私は風間さんがこんなふうに笑うところをよく見かけるし、その理由も何となく予想がつく。風間さんは、私達が仲良しなのが多分、嬉しいのだと思う。私と菊地原なんかよく喧嘩をするし、仲裁しようとする歌川や三上を巻き込んで大騒ぎするけど、風間さんは私達を呆れて嗜める反面、いつもどこか嬉しそうだ。 以前、太刀川さんに、風間隊は家族みたいだよな、と言われたことがある。つまりは、そういうことなんだと思う。 「模擬戦かランク戦でもやってやれば気が晴れるんじゃないか」 「結局そこですか」 「あいつはお前と戦うのが好きだろう」 「いやいやいや」 そもそも、菊地原が戦闘好きというところから怪しいし、誰かと模擬戦やランク戦をしているところはあまり見ない。そんなことを言ったら、私だって模擬戦ばっかりで点数が動くランク戦はさっぱりなのだけれど。菊地原が「めんどくさい」と言うのを想像しながら私は肩をすくめると、風間さんはそれに「どうだろうな」と意味ありげに笑っていた。どうだろうなって……。私はその台詞の意図をはかれないままいると、自分の中で答えが出るより先に、向かいから物凄い勢いでこちらに向かって来る二人の馬鹿が見えた。うん? 「200メートル先に目標捕捉」 「確保ー!」 騒がしい足音が二つ分。何、と思う間もなく米屋と出水は風間さんの脇をすり抜けてこちらに飛んできたのだった。二人は私が逃げる間も与えずに、素早く私のサイドを押さえると、両腕をそれぞれ捕まえた。勢いに飲まれてバランスを崩しかける。 「は、ちょっ、何?」 「お前達、危ないだろう通路を走るな」 「あ、すんません」 「2人とも離して」 「ランク戦しよーぜ!」 「しようぜ! じゃなくて離せっつってんの」 元より力には自信があるし、何よりトリオン体ではそれが強化されるから、誰かに捕まえられたって逃げ出すのはわけないのだけれど、換装体になったところで、流石にA級の戦闘狂二人分の力には敵わず、ただ私は身動ぎする。風間さんも見ているだけで助けてくれる気配はない。というか風間さんはこういうとき大体助けてくれない。 「ていうか私ランク戦はやらないってば」 「はチーム米屋な」 「本当話聞かねーなおめーは」 「はあ、先に入れようっつったの俺だからお前は他のアタッカー当たれ」 「いや一番初めに入れたらって提案したの緑川だろ」 「あいつも仲間かよ」 ていうか全然話が見えないんですけど、チーム米屋ってなんだ。すげー頭悪そう。相変わらず二人は私の腕を掴んだままで、他にアタッカー誰がいるんだあーだこーだとやっている。アタッカーなんて腐るほどいんだろーが。つうか風間さんだってNo.2のアタッカーだぞ。まあ風間さんは暇じゃないけどな! 風間さんは、しばらく私達のやり取りを見守ってから、時計を確認して「と一緒に遊んでやってくれ」と言い出した。はーいと二人。やめろ。 「風間さん見捨てないで」 「暇だったんだ、ちょうど良いだろ」 「私は風間さんと一緒にいたかっただけなのにどこら辺がちょうど良かったのか……」 「をよろしく頼む。ああ、それからアタッカーなら菊地原が空いてると思うぞ」 「この流れ弾感、菊地原がめっちゃ不憫」 さっき菊地原は疲れてるって話で落ち着いたんじゃないの。風間さん鬼か。彼は一体どういうつもりなのか、それだけ言って、隊長会議に行ってしまった。そこからは冒頭の流れに戻る。ちなみに、私がチーム米屋なのかはたまた別の何かなのかは恐らくまだ決まっていない。 私は廊下ですれ違うあらゆる隊員に注目を集め、途中嵐山さんに「三人とも相変わらず仲良しだな!」と眩しい笑顔を向けられたりしながら、一体どうみたらそういう湾曲した結論に至るのか疑問を抱えたままとうとうランク戦室に辿り着いた。 「あ、本当に連れてきた」 そこでようやく私は腕を解放される。ベンチに腰をかけていた緑川が私達に気づき、笑ったのが見えた。こいつ。 「緑川、何私の名前出してんだコラア」 「だって俺先輩がソロランク戦してるとこ見たことないんだもーん」 もーん、じゃない。可愛ければ許されると思うなよ。私はそう緑川に手刀を繰り出そうとしたが、それよりも先に「おー来たな」なんてさらに諏訪さんと荒船先輩と遊真までもが姿を見せた。私は思わず遊真の頭に手をやりながらも、気のない声で「……どうも」と返す。この人達暇なんだろうか。 「ばっちり捕まったみたいだな」 「……。何ですか、保育園ですか、諏訪保育園なんですね。園児が二人脱走してるんですけど、しっかり面倒みていただけないと困りますよ諏訪先生」 「誰が先生だ、ショットガンぶっ放すぞコラァ」 「……ていうかこのメンバーでランク戦って、もしかして混成部隊のランク戦でもやるつもりなんですか」 「お、御名答」 諏訪さんの隣にいた荒船さんが笑った。どうやらこれは、何か面白いことねーかなあとふらふらランク戦室を彷徨う人間達の類は友を呼んだ結果の集いらしい。混成部隊に、米屋が超面白そうだろ、みたいな顔を私に向けている。 私は今の給料で事足りているから、わざわざ混成部隊を結成して個人の任務を増やすことは滅多になくて、数ヶ月に一回くらいのペースで組むくらいだ。そう考えると確かに物珍しいし、超面白そうなんだけど。 「まだ渋ってんの? 別にポイントのことは誰も気にしてねえよ」 「つうか負けなきゃいい話だしな」 出水と米屋の台詞に、遊真が「どういうことだ?」と問うたのだけれど、それはおいおい話そう。訳あって私のポイントが皆に比べてかなり低いという話だ。だからランク戦も普段は絶対にやらない。私と同じ戦闘レベルの人と戦って私が勝った場合、私はかなりポイントが低いから、戦闘に見合わないだけのポイントを相手から奪ってしまうのだ。だからやろうとしなかった。勝負なら模擬戦で事足りていたし。 「まあ、良いよ。ここまできたらやる」 「ようし、の参加が決定したとこで、そういや負けたら、勝った方の言うことを一日何でも聞くって賭けてるって話、俺言ったっけ」 「言ってねーよ。やるって言う前に聞きたかったんだけどそれ」 「あ、わりーわりー」 絶対悪いと思ってないやつ。けど、嫌なら勝てば良いんだろ、勝てば。半ば開き直った私は、メンバーをぐるっと見渡して、「そんでチームはどうするんですか」と諏訪さんを見た。このままだと4対3になるけど。 「あ、ちなみに俺と遊真センパイは参加しないよ」 「おや」 「俺も混成部隊でランク戦、超やりたいんだけど、これから任務なんだよね。遊真センパイも修センパイに呼ばれてるみたい」 「何だ癒しがいなくなるのか。ならやっぱ私も帰ろうかな」 「オイ」 「冗談だよ出水」 結局、二人とも次は絶対自分も誘って欲しいと大騒ぎしながらランク戦室を出て行った。そうか、今日は緑川も防衛任務だったのか。 まあ、全員こうして任務があるわけだし、そうそう良いコマが揃うわけないか。特にA級上位組は色々と特殊なものを扱って忙しいことがあるし。 「でも緑川達が抜けたところで、それでも1人足りないですよね。どうするんですか」 「ああ、そうだな。……例えばさっきからこっち見てる暇そうな奴ならあそこにいるぞ」 そう言って荒船先輩が階段の方を顎でしゃくるので、私達は釣られてそちらを見ると、そこにいたのは菊地原だった。ああ……と私は半笑いを浮かべる。流れ弾は回避できていなかったようだ。 ここからの距離は割とあるけれど、彼は持ち前のサイドエフェクトで、私達のやり取りはしっかり耳に届いていたらしく、視線が自分に集められた瞬間、一気に表情を曇らせたのがここからでもはっきり分かった。 「、菊地原を捕まえて来い」 「私ですか。ていうかこの距離じゃ菊地原はさっさと逃げますよ」 「だから捕まえられる距離にいるうちに行け。グラスホッパーあんだろ」 「一応私達、任務終えてきたばっかなんですよ、同じ隊の先輩としてたまには菊地原を守ってあげたいので、今回は彼は見逃してやって下さい」 もしかしたら怒りの原因は私のせいかもしれないその償いのつもりで、疲れてるなら早くどっかに行きなさいという意味も込めて、菊地原に私はひらひらと手を振った。諏訪さんは、「なら誰誘うんだよ」と言ったが、そばで荒船先輩がスマホをいじっているから暇な人でも探しているに違いない。「村上先輩とか来たら楽しそう」と出水達に同意を求めると、荒船先輩の顔がスマホから持ち上がった。 「聞いてみたら犬飼も暇っつってるぞ、」 「あっ私菊地原捕まえてきます!」 「菊地原可哀想」 出水が真顔で言った。私も思うけど犬飼先輩とか勘弁しろよって感じなのでしようがない。私あの人苦手なんだよ。ちくしょう荒船先輩わざと犬飼先輩の名前出したな。 ニヤついた先輩の方を恨めしく見やりながらも、素早くグラスホッパーを並べると私は勢いよく菊地原の方へ突っ込んで行った。これで彼が換装していたら、あっという間に逃げられていたのだろうが、任務を終えて換装は解いていた彼を捕まえるのは容易い。「ちょ、何やってんの先輩」「黙って先輩の言うこと聞きなさい」「これパワハラだ。風間さんに言いつけてやる」抵抗する菊地原を脇に抱えて私は彼らの元に戻ると、彼はものすごく不服そうな顔で「先輩に関わると、ほんっと『いつも』ロクなことないんだけど」と今日一番のイラついた声で言うのだった。 「同じ隊なんだから仲良くしろよお前ら。犬飼呼ぶぞ」 「大丈夫です仲良いです荒船先輩」 「冗談でしょ」 「って菊地原が言ってるぞ」 「大丈夫です仲良しですオラ笑え菊地原」 「えー」 「必死かよ」 菊地原と無理やり肩を組んだ隣で、出水が頭の後ろに腕を回しながら「つーかってそんな犬飼先輩のこと苦手だったんだ。仲良さそうに見えたけどな」と、首をかしげて見せた。知らないのか出水。あの人はなあ、やべえぞ。 犬飼先輩は私に執拗に意地悪をするから苦手だ。きっと影浦先輩のこともあって、その弟子ということで絡まれていることもあるのだと思うけど。影浦先輩は大好きだが、これだけはあの人に関わって失敗したなと思った。 「お前犬飼にすっげー気に入られてるもんな」諏訪さんの台詞はここ半年くらいの中で一番嬉しくない台詞だった。 「何でも良いけど、ランク戦やるならチーム決めさっさとしてよ」 「おっ、菊地原ヤル気じゃねーか」 「どうせ逃げても先輩が捕まえに来るんでしょ。逃げるの疲れるし、しょうがないから付き合ってあげますよ」 「すいませんうちの菊地原生意気なんですけどこれで可愛いとこあるんで犬飼先輩は呼ばないでください」 「逆に呼びたくなる嫌われっぷりだな」 諏訪さんは、そう苦笑を零す。勘弁してよ。絶対あの人喜んで参加するから。そんなん良いからチーム決めましょう、チーム。諏訪さんを急かすと、彼は分かった分かったと肩を竦めた。 「そーだなぁ。風間隊揃えたらどうせ連携うまく繋がるしつまんねーからこの二人はチーム離そうぜ」 「じゃあを取るか菊地原ってことだな」 「隊長クラスも分けましょうよ」 それなら私は荒船先輩のチームに入りたいな。ちら、と先輩を見ると、彼は私の視線など御構い無しに菊地原の腕を掴んで「んじゃ菊地原貰う」と簡潔に答えた。この人ことごとく私の理想と逆を行くな。 「なら俺はだな」と諏訪さん。諏訪さんは別に私だろうが菊地原だろうが、どっちでも良かったみたいだから揉めることはなかったけど、荒船先輩、絶対これもわざとだ。 「私が荒船先輩とやるの苦手だと知ってのこの仕打ちですか」 「何のことだ。俺は賢そうな菊地原を選んだまでだぜ」 「荒船先輩に遠回しに馬鹿って言われた……」 「おうおう、は俺が上手く使ってやる」 「……あざす」 うな垂れた私の声は、ランク戦室の賑やかさに消えそうなくらいだった。 もともと、荒船先輩がアタッカー一本のときから、私は彼の闘い方が私の相性と悪いことをよく分かっていた。 その理由は二つ。一つは、彼の剣は私の鎌を『止める』のがうまいから。もう一つ、荒船先輩はアタッカーの癖に頭脳派っぽいところがそこはかとなくやり辛いから。前者は防御の話でこちらに食らうわけではないから、ハウンドも上手く使えばどうにでもなるのだけれど、面倒なのは後者気持ちの問題だった。もちろんアタッカーだってきちんと頭を使う必要はあるし、例えば菊地原だって突っ込んで行くタイプよりはどちらかと言うと頭脳派に近い。けど、アタッカーの気質は大体、行け行けドンドンだし、考えるより先に、経験から培われた最善の手に向かって身体が勝手に動いてるもんだと私は思っている。でもなんか荒船先輩はそれとちょっとだけ違う。……はずなのに、オラオラしてるとこもあって本当に読めないよく分からない。 「米屋と出水はどうするんだ」 「どうする米屋」 「じゃんけんとか。勝ったらどっちって決めて」 「じゃんけんかー……」 「ていうか米屋先輩って、前先輩と組むのやり辛いって言ってませんでしたっけ」 じゃんけんとかゆるゆるだなと笑う荒船先輩の横で菊地原がふと口を挟んだ。米屋がと私を見る。そう言えば黒トリガーの一件でそんなこと言ってた気がする。極秘任務のときのことなので、荒船先輩や諏訪さんがいる手前、ああ、と曖昧な相槌しか打たなかった。そのときのことを知る出水も、そういやそんなこと言われて三輪に絡んでたなあお前と私を見る。懐かしいね。 「あー、言ったわ。そうだった、と同じチームはやり辛いわ」 「じゃあ決まりだな。俺が諏訪さんチーム、米屋が荒船さん菊地原チーム」 「うん、別に何でも良いけどさ、皆私のこと嫌いなの」 「いや、そういうんじゃなくて、俺もお前も改造孤月でかなり振り回すだろ。持ち手がぶつからないように気ぃ使いそうでなんかやり辛い」 「とか言って今まで一緒に任務やったときにぶつかったことないけどね」 「気分だよ、気分ー」 ふうん? と出水が不思議そうに相槌を打っていた。なんだその顔。 「そういうもんかねー。俺、結構と連携上手く行くからむしろやりやすいけどな」 「よーし、出水にはジュース奢ってやる」 「よっしゃ」 「えー先輩巻き込まれた僕には」 「菊地原にもしようがないから奢ってあげよう」 「……どーも」 「うん、よしよし」 「……」 菊地原の頭を撫でると彼はふと、神妙に、それでいて何かを告げたそうな、そんな顔で私を見つめ返した。私は首をかしげる。 時折彼はこんな表情を私に向ける。いつもそれを読み解こうとして、結局分からないままなのだけど、今回も、それからすぐに「ほら行くぞ」と私達を呼ぶ声に、先を歩き出していた諏訪さん達の方を釣られて顔を上げた。菊地原が「ハイハイ」なんてそれを追いかける。彼に触れていた手が離れると、出水がこそっと「今の表情ってどういう意味」と私に尋ねた。私も知りたい、と言うより多分その小声でも菊地原には聞こえてると思うよ。 「さあ、先輩大好きーって顔じゃないの」 「どうやったらその考えに辿り着くんだよ……」 「私が菊地原が大好きだから」 「根拠になってねえし」 「なってるよ。私が菊地原大好きでちょう大事だから菊地原も絶対私のこと大好きだと思う」 先を歩く菊地原は聞こえているのかいないのか、もしくは呆れて何を言う気にもなれなかったか、振り返ることはなくて、代わりに振り返った荒船先輩の「早くしろ」という声に私達はようやく歩き出したのだった。 「……いや、やっぱ根拠になってねえよ」 ( 160919 ) |