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片隅

おはなし


華がない、といつも思う。

男と汗くささで満たされたこの部室はマジで嫌いだ。
こんな時一人くらい女のマネージャーがいたらなあとか俺に彼女がいたらなあとか思うんだけど、いないもんは仕方ない。いたらいたでめんどくさそうだし。早くこの部室から出たい俺はさっさと着替えを終えてここを出ていこうとする。しかし丸井先輩の声でドアを開ける手を止めた。


「帰りマックよんね?ジャッカルの奢りで」
「いッスねー」


おい俺かよとかいつものジャッカル先輩の台詞を聞き流して外で待っていることを告げた俺だったが、ふと英語の課題があることを思い出した。量にもよるが早く帰らないとまずいかもしれない。
鞄を漁って課題を探しはじめた俺だったが、目当ての物は見つからなかった。どこにやったか記憶を巡らす。よく覚えていないが、可能性としては机の中だ。
丁度部室から出てきた先輩達に課題を取りに戻ることを告げて校舎に向かって走る俺。


「ったくかったりいな」


思わずため息が零れる。走るのも怠くて速度を落としたその時だった。


「一昨日来やがれこの雌猫!」


そんな声が聞こえて俺は立ち止まった。ぐるりと辺りを見回す。近くの木の影に誰かいて、興味本位で覗いて見た瞬間だった。パキリと、そこにいた女子生徒は携帯を真っ二つに折ったのだ。


「…は?」
「え?」


俺のマヌケな声に顔を上げた女子生徒は「君誰?」と口を開いた。え、俺知らないの?立海の生徒かよマジで。しばらくお互い無言だったが、女子生徒の方から沈黙を破った。


「知ってるかい少年」
「…」
「この携帯って100gちょっとしかないんだよ」


知らねえよ。率直な俺の感想。誰だってそう思うはずだ。この女子生徒のあまりの胡散臭さと怪しさに眉をしかめて佇んでいる俺の表情なんて気にしてないみたいだったけど。


「この携帯の中には友人の情報がたくさんつまってる。それがたったの100g」


なんか言い方が通販みたいだ。試しに言ってみると「私も今思った」なんてちょっと照れたように笑った。何だコイツ。見た所先輩っぽいけど。(ハッキリ言って認めたくない)


「まあ要するに友情なんか100gに過ぎないってこった」
「はあ、俺行っていいスか」
「100gの友情。友情って軽いんだね。そんな友情要らない」


俺の話なんか聞いちゃいねえし、何かこの人頭いっちゃってる気がする。悟ってるし。大丈夫かな、つかこの人に絡まれてる俺大丈夫かな。帰れんのかな。てか何かこっちにニコニコしながら近づいてきてるマジどうしよう助けて先輩、(なんて初めて思った)


「よし、ということで君の携帯貸しな。壊してあげるよ」
何でだよ
「ほらほら貸したまえ」


来るなよ、と後ずさりした時ふいに何処からか演歌が流れてきた。着メロ?いや、でも俺のじゃねえし。てか演歌って。


「あ、もしもしです」
お前かよてか何で携帯二つあんだし


この女はというらしい。まあどうでもいいけど。電話を終えたはこれはプライベート用なんだよと偉そうに携帯をちらつかせた。
俺は壊れて地面に捨てられている方を指さす。


「じゃあそっちは?」
「え、こっち?こっちはー…あれだよ、プライベート用」
「同じじゃねえか」
「やっぱ業務用にする」


何だコイツ疲れる。帰りたい。
がまだ喋り続けていたが日が傾きかけてきたし、俺の精神的疲労もピークだったからシカトして帰ることにした。


「あ、無視は良くないぞー」
「…」
「このワカメ!」
殺されてえ?


くるりと振り返って睨みつけてやるとは「きゃー!」と叫んで走り去って行ってしまった。

マジで変な奴。




(おっせーよ馬鹿也)(いや、何か変な奴に絡まれて)


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本当に本当の新連載始めちゃいました!
あああ赤也夢とか新鮮だ!結局ギャグ!
110315>>KAHO.A