終わったよと黒板消しを受け皿に置く幸村は私の方に振り返った。丁度日誌を書き終えたから、それから顔を上げて頷く。教室の戸締まりをザッと確認した私は日誌を小脇に席から立ち上がると幸村が私を呼び止めた。 私は振り返らない。早くしないと部活に出れないよと急かしてみる。しかし幸村はいつも通り、ゆったりした口調で大丈夫だよと答えた。 私としてはすぐにその場から、幸村がいるこの場所から離れたかったのに。 廊下に出しかけた足を引っ込めるのと同時に、幸村が私の近くに来たのが足音で分かった。しばらく、彼も私も黙る。時計の音が妙に大きく聞こえた。 「…俺、気づいてるよ」 幸村の一言につい振り返る。彼が何の事を言ってるかなんて、聞かなくても分かる。私が幸村を避けている事を言っているのだろう。 私は、彼と一緒にいるときの空気が、嫌いだった。いや違う、怖かった。幸村は面白い奴だし、話しやすいし、一緒にいて一番楽しいと思える奴だった、と思う。けど、いつの間にか私達の間の何かが変わっていた。 「お前は馬鹿だね。気づかなとでも思った?」 「…」 「でも、俺はが好きだよ」 「知ってると思うけど」自嘲気味に笑う幸村はどこか悲しそうで、彼のその表情に、私は数日前に自分をフッた男子の事を思い出していた。今思えば好きになる程の男ではなかった気がしてくる。告白した時の雰囲気も、今と掛け離れていた。もしかしたら好き、とは違う感情だったのかもしれない。 私はどうしていいか分からなかったから視線を落とし、自分の足元を見つめる。幸村の言う通り、気づいてないわけじゃ、なかった。 そうなんだ、と妙な間の後やっと声が出た。白々しい。知ってた癖に私って馬鹿。 私の反応を予想していた見たいに幸村は微笑んだ。 「フラれて傷ついてる所に付け込むつもりはないけど、お前が立ち直るまで待つなんて程、優しくもないよ俺は」 「…、っ幸村」 「待てないよ、もう」 幸村はそっと私の頬を包むように触れて唇を重ねる。 「俺は悪いなんて思ってないから」 私をすぐに解放し、綺麗に笑う幸村から目が逸らせなくなって、そんな自分に、心の中で舌打ちしてみた。 許されるなら、まだ傍に (その反応は、期待してもいいのかな俺)(ご勝手に) ( 結局好きだった // 110531 ) 初めて幸村夢というものを書いてみちゃいました。意味不明な話。とにかく幸村に愛される話を書きたかった。 多分ね、ヒロインは幸村が好きだよ。でもそれを受け入れたくなくて、他の男子に告白したりしてたと思う。 TITLE BY 群青三メートル手前様 痛暗十三題 |