昼休みになるなり見たことも話したこともない女の子達がとんでもなく友好的な雰囲気を醸しつつ私の元にやって来て体育館裏に案内してきた。
ガサツな私は、女の子の友人が両手で数えられる程もいない悲しい奴で、女子の友人は年中無休で大募集中だ。まさに来るものは拒まず。だからついつい彼女達について来てしまったわけだが現在私の前にずらりと並ぶ女の子達の様子と言ったらとても友好的とは言えない。……

どうしよう。

群れた孤独と上の空



     

「…あのー」
「アンタさあ、何で呼び出されたが分かってるよね」
「ああ、呼び出されたんですか私」
「単刀直入に言うけど、丸井君は皆のもの。独占するとかずるいよね?」


まるで諭すように私に微笑む女生徒A。名前は知らない。知った所で私の危機には変わりないし、そんなこと今は大した問題じゃない。つか丸井君は皆のものだって。うわアイタタタだよね。恥ずかしくないのかな。まあそのうち自分の過ちに気づく時が来るんだろうな。黒歴史だ。


「丸井君から離れて欲しいんだけど」
「いや、私に言われても困る。付き纏って来んのあちらですから」
「ちょーうっぜえわ」
「自慢的な?性格悪ー」
「うん。自慢だよ」
「なっ…」


ちなみに性格が悪いのも認めてやる。でもさあ仕方なくないか。アンタら人妬みすぎ。そんな事ばっかやってっと心も顔面もアイタタタになるぞ。あ、ごめん今更だな。
鼻で笑うといきなり髪を掴み上げられて体ごと体育館の壁に押し付けられる。うお、いってえー。けたけたと笑い合ってる彼女達とは流石に友達になれそうに無いことをちょっぴり残念に思った。


「どうする?このままだと丸井君に見せられない顔になっちゃうけど」
「やだあ、もうなってるじゃーん!」


うっっぜえええ。何コイツら私の顔より自分の顔鏡で見て来いよ。小石みたいな顔してるからな。ほらその辺に落ちてるやつ。お前らなんかジャリでいいや、ジャリで。
そう思うと女生徒Aがマジでジャリに見えてきて哀れになった。ある意味緊張したときとかにキャベツとして顔を変換されるより可愛そうだと思う。押し付けられている壁の冷たさを感じながらふうと息をつくと、不意に携帯がピロピロと場違いな音を発した。お、お、どうした携帯。ってこの変な着メロは丸井じゃないか。

ジャリBが私のポケットから許可なく携帯を取り出し、表情を歪めた。丸井君からじゃん、と携帯をぷらぷら揺らす。何でも良いけどお前絶対携帯は落とすなよ。


「切っちゃえよムカつく。ついでにアドレス帳から消せ」
「うおおおい!!待って待って、それ私が丸井から怒られるんだよ!?アイツ怒ると怖いんだってマジで!」
「知らねえよ」
「いや、知れよ!」


丸井は普段怒らない分、ぷっつんきたらやばいんだって。殺られる。私は恐怖におののいていると、どうやらジャリBが電話を切る前に丸井が先に切ったらしい。あ、切れたという彼女の声と共にジャリ達は私に視線を戻し、周りは再び『、絶体絶命だぜ!』的な空気に包まれた。(言ってしまえば丸井に怒られても絶体絶命だが)
うーんどうしよ。あ、そうだとりあえず携帯返してほしいなあ、なんて。そのままだと窃盗罪で訴えますよ。
私の頭を押さえつける手をうまくねじって彼女達の手から脱出すると、また丸井からの着信が入った。しかし携帯はジャリBの手の中である。最悪だ。


「またかよ。もう切っ、」
「おーいたいた。よ、


これまた着メロ同様場違いな雰囲気を醸して現れやがったのは今まさに話題の中心に上がっている丸井様で、彼は私を見るなりニッと笑った。馬鹿かコイツは。


「え、でー…何してんの?友達探し?」
「うん。まあ」


お前女友達いねえもんなあーなんてけらけら笑う丸井は私からジャリンコ達を改めて視界に捕らえると、急に神妙な顔をした。いきなりの丸井の登場にタジタジしっぱなしのジャリ。彼女達は、違うの、違うのよ丸井君、なんて何が違うのか、とにかく何かを否定している。


「へー違うの。俺はてっきり今時の女子のリンチが見れちゃったりとか思ってたわけだけど」


私の携帯を持つジャリBから携帯を取り上げた丸井はそれを私に投げる。何でお前がの携帯持ってんだよ、なあ、なんて丸井の声が明らかに低くなった。口元を歪める彼はいつもの優しい丸井ではない事ぐらい、その場にいる全員が気づいていた。


「リンチじゃねえんだろ?」
「そ…そうよ。さんには、その、ちょっと相談が、」
「ふうん。で、まさかが怪我しちまうな展開もなかったんしょ?」
「…ない、です」


ガッと思い切り校舎の壁を殴りつけた丸井はいつもみたく微笑むと、それならと続けた。恐ろしく言動が噛み合ってない。だから嫌なんだ。(こういう時の丸井は怖い、)(から)


「今後もこんな展開、ぜってえない。そうだろい?」


完全にビビりまくっているジャリンコ達は言葉を発さない。そんな彼女達に痺れを切らしたのか、丸井はおい、と唸るように呟いた。


「…は、はい…っ」
「んじゃいいや。もう行け」


丸井の台詞に、女の子達は、い、行こ行こ!とその場から逃げていく。背中が見えなくなってから丸井は私を一瞥した。怒りの尾を引いている可能性を考えると、次に丸井が発する言葉は酷く私を震え上がらせるに違いない。身構えていると、予想とは反して、ばーか、と彼は私の頭をぐしゃりと乱した。あ、怒ってないんだ。良かった。


「俺、が怪我するとかマジ勘弁だからな」
「…私だって丸井に怒られんのとか勘弁だし」


私の言葉に彼は苦笑すると教室に戻るぞ、なんて私の手を掴んで歩き出した。丸井の存在が、いつも以上に大きくて、安心できる。


「はは、やっぱ丸井がいてくれないと駄目だな、私」


私は呟くと、丸井は振り返らずに「知ってる」と口を開いた。


「俺だって、がいないと駄目だし」




(丸井の言葉に、頬を緩ませる私がいた)

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ブン太に守られたいというリクエストをいただいて…一生懸命ブン太に守ってもらったつもりなのですが、読み返してみるとそうでもない気がしてきました…汗
ご期待に沿えず、本当にすいませんっこんな私をこれからも宜しくしてやってくださると嬉しいです。

この度は相互リクエストしてくださってありがとうございました!
(( 沙羅様リクエスト夢 || 沙羅様のみお持ち帰り可 ))110615…→ 天宮
TITLE BY 47様 proof of the dog