「…あー…疲れた」 やるせない私の声が消毒臭い部屋に溶けた。それと同時に寝ていたベットのカーテンが開かれる。背中を丸めて寝転がる私のこの空間を邪魔したのは赤い髪の侵略者の丸井ブン太だった。彼は私を押し退けて自分が座れるだけのスペースを作ると勝手に腰を下ろした。 「俺も疲れた」 「お前と一緒にすんなし」 私の疲れは君のとは違うんだよ。 のそっと寝起きの重たい身体を起こす。丸井はぐしゃぐしゃになっている私の髪をさらに乱すように髪に触れた。彼の手を拒むわけでもなく、疲れた、そうもう一度呟いてみた。私達はいつもこんな感じだ。保健の先生がいない時間を見計らってベットを占領しに来る。そしてそれを邪魔する、丸井。 「何でさあ、私生きてんだろ」 「知らね」 冷たさを感じさせるまでの清潔感漂う天井、壁、シーツ、白、白、白。何もしてないのに何でこんなに疲れるんだろう。ああ生きる事が疲れる事はとっくに知ってるけど、それだけだろうか。 死んだ方が絶対良いよ、私は。感じた事を言葉に表してみたら薄っぺらく聞こえた。病んでんなあ、丸井のその言葉の方が現実味を帯びて、はっきりしていた(、気がした) 「ねえ丸井、私を殺してみて」 「何で?」 「君に殺されるなら本望」 多分。まあ結局のところ知り合いなら誰に殺されたっていい。ただ今たまたま丸井ブン太が近くにいたから彼に言った、だけ。丸井はしばらく天井を見上げて唸ってから、やだと答えた。ああそう。 「面倒だし。殺したら俺人殺しじゃん」 「ああ、うん」 「後始末かったるいし」 「ああ、そう」 「俺好きだし」 「ああ、…悪趣味」 「だーよなあ」 けらけらと彼は今日初めて私に笑顔を見せた。何が面白いんだろう。私は欠伸をして再びベットに寝転んだ。このまま放課後まで寝てしまおうか。丸井と話すと余計に疲れるし。 「俺に殺されるなら本望、ね」 「うん」 「自分が嫌いなわけ?」 「さあ」 丸井はポケットからガムを出したからそれが口に入る前に取り上げて自分の口にほうり込んでしまう。文句を言われると思って身構えていたが、彼は何も言わずに新しいガムを出した。 「は俺がいなきゃ生きられなくなればいいのにな」 「…えー…やっぱ悪趣味」 「っるせ。どうせお前、自分大事にしねえし、いらねえんだろぃ?なら俺がもらう」 「…」 まさかそんな事言われるなんて1ミリも予想していなかった。いつも通り馬鹿にされて終わりだと思っていたけど、違った。しばらく私は固まっていたが、視線を落とすとふっと笑みを零す。 「…何それ告白?」 「違う、プロポーズ」 「ははっ」 丸井ブン太は私にはちょっと勿体ないかな、そう続けると、丸井はなんのためらいも見せずに同感だと笑った。悪趣味な上に失礼ときた。プロポーズしてる癖に天井をぽーっと見つめ続けている丸井の背中を私は軽く叩いてこちらに振り向かせる。 「まあ、『丸井ブン太』を私の生きる意味にしてもいいかな」 いつしかそれを愛と呼ぶ (丸井ブン太に恋してみようか) −−−−−−→ 病んでる子とブン太のやり取りが書きたくなって書きました。 またボカロの曲を聞いていたら思いついたという。二息歩行てやつっす。 110612…→ 天宮 TITLE BY 家出様 |