「ストッキングって良いよな」


は、ストッキング?何故。ブン太の部屋で、持参の雑誌を広げていた私は不意に発せられた言葉に雑誌から顔を上げた。再び彼は同じ台詞を口にする。そうかストッキングが良いか。あ、もしかしたらストーキングとかと聞き間違えたのかもしれない。いやいやストーキングだったらもっと嫌だ、というか危ないよね。ついにおかしくなったのかもしれない。ブン太は昔から自意識過剰だわそれでも何でもできてケーキをホール食いするわで前からおかしかったけど。
何も言わずにただ私を見るブン太を私も見つめ返す。求めてもいない説明を彼は始めた。若い女が履くストッキングが良いらしい。そらそうだ。私はブン太の彼女歴2年だが彼の熟女趣味なんて知らないし聞きたくもない正直。というかいきなりどうしたんだろう。私ストッキング履いてないしどこにも関係ありそうなものは見当たらない。ブン太は、すっと私の方に近づいてきたかと思えば腕を掴んで近くの壁に押し付けた。マジか。


「んー何だろ。縛る系のもんがさあ」


ついに目覚めたのか別に良いけど。でも巻き込まれるのはあんま好きくない。どうやらブン太は思い付きでストッキングなんて言いはじめたらしい。
そしてネクタイでも良いという事まで教えてくれたありがとう。(でも嬉しくない全然、)ハンガーにかけてある制服からネクタイを取ったブン太は私の腕を縛りつける。困ったな。


「いや、まずい。それはまずいよブン太」


お母さんも弟もいるんでしょうが。バレたら厄介だよそうでしょねえ。私もうブン太の家来れなくなるし、てか縛るとかまずいよ。私そういうの苦手だし無理だし自由に動けないのはちょっと、ねえ分かるよねブン太。いや、全然てそりゃないよね。大丈夫、うまくやるとか無駄に自信満々に言い切られても正直困るってゆーか、そんな時にいつになくキリッとした顔(いわゆるキメ顔)されてもカッコイイだけなんだから。
てかやめない?今ならやめられるよ。このままだと私達変態の道に進んじゃうんじゃないねえ、私まで目覚めちゃったらどうするんだかまあ良いけどねブン太と一緒ならとか言ってみた。あーいや冗談ね、うん。ということで止めようか。でも無理な相談だとブン太は口元を歪めただけだしどうしようかな。てか一体縛る事の何が良いの。良さが分からないよ。あの、ブン太くん?


「ばーか、嫌がるお前をってのが燃えんじゃん」


丸井ブン太がおかしくなった事は認めるけど私は違うよ。ほんと、違いますから私そういう趣味ないんで。大事だから何度でもいいますけどね。それを踏まえてちょっと言わせていただきたいんですけれども。


何君なんかカッコイイ。




要は君に目覚めたのよ
(いやほんと違いますから変態なブン太が素敵とか思ってませんから)
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チャットモンチーのある曲を聴きながら、「失恋の話書きてえなあ」で出来た話。
とりあえず何が酷いって失恋の話になってないっつーのと、めっちゃ短いってゆーね!
地の文を沢山書きたかったので(会話を書きたくなかったので)小ネタ的な感じになりました。 私は変態でも何でもブン太は好きだよ。

110514…→ 天宮