カーテンの隙間から漏れる光で私は目を覚ました。まだ少し重いまぶたを持ち上げ見慣れない部屋を寝転がったまま眺める。ああ、ブン太の家に泊まりに来たんだった。今日はお互い部活もないし、よし、もう一眠り。くるりと寝返りをうった瞬間目の前にブン太の寝顔があって、私はすぐに元の体勢に戻る。えええ。何で一緒に寝てんの。記憶を巡らせ昨日の夜の事を思い出していると、確かうつらうつらしてる時にブン太が入り込んできたような。眠かったし抵抗しなかったんだな、うん。…起きよう。
ブン太を起こさないようにモソモソとベッドから出ようとした時、いきなりお腹に腕を回され思い切り布団の中に引き戻される。


「ひゃっ…ちょ、ブン太起きてるの!?」


回された腕を掴んでそう言うと後ろからブン太が私の耳元に口を近づけた。
寝ぼけてんだな寝ぼけてんでしょ!耳にかかる息がくすぐったくて、冬なのに妙に手に汗かいてきて、じたばたしているとブン太は呂律の回っていない様子でどこ行くんだよ、なんて呟く。寝ぼけてる癖に腕の力が強くて逃げられない。


「もう、起きる」
「…駄目に決まってんだろ」
「…え、いやでもさあ」
「だーめ」


何だそれ。無茶苦茶可愛い。
寝ぼけ眼のブン太にキュンとしながらもちょっと困っていると彼はぎゅっと私に抱き着いてきた。それはいつもの包み込むような、優しい抱擁ではなくて、子供が甘える時にするようなもので、私は思わず苦笑した。ブン太が可愛すぎる。今日はやけに甘えますねなんて言ってみたら、2人で過ごすのは久々だからと素直に答えた。否定すると思ったのに。


こっち向いて」
「…やだ」
「…向けって」


ぐいっと無理矢理ブン太の方に向かされて、ばちりと目が合う。
ブン太は私の後頭部に手を回して額をくつけたから私は思い切り顔を逸らした。「何で!」そう非難の声を上げた彼はムスッと私を見つめる。キスはしないよ、とブン太を遠ざけるともう一度「何で」と問われた。


「したら止まらなくなるでしょブン太」
「止めるつもりねーし?」
「威張るとこじゃない」
「いてっ」


つまらなそうに私をじとっと見つめたがそんな顔したってするつもりはない。しかし彼は諦めるつもりはないようで、私の腰に手を回すとそろりと服に侵入させてきたから足を蹴飛ばした。いっ!なんてブン太は呻く。ざまあ。


「手つきがえろい。やばい。駄目」
「えー…ー」
「やだってば」
「ちょっとだけ」
「ちょっとじゃすまないじゃん」
「うん」
「うんじゃないよ。せめて否定しなよ」
「ううん」
「遅いよ」


まだ寝ぼけてんのか。蹴っ飛ばしたくらいじゃ駄目だったかな。ああもう。ぷくっと頬を膨らました私はブン太なんか嫌いとベッドから出ようとすると彼は慌てて腕を掴んだ。わりぃ、マジごめんってー!なんて言うから私は仕方なく振り返ってあげるとしょぼんとしたブン太が久々だったのに、とかぶつくさ言い始める。…まったく、しょうがないなあ…


「今日だけだから」
「…え?!マジ!?」
「いや、待ってやっぱ」
「待ったなーし」
「ちょ、ブン、っ!」


あまりにもブン太の目が輝いたから慌てて拒否しようとしても時すでに遅し。腰にガッチリ腕を回され口を塞がれた私は為す術なしだ。そんな私にブン太はわざと水音を立てるように角度を変えて、口内を荒らしたから、……ああもう駄目だ私。ぼうっとする頭を見捨てる覚悟をした時、ブン太がやっと私を解放してにやりと口元を歪めた。


「こんなとこでへばんなよ」


ムカついた。私は自分の唇をブン太に押しつけて強引すぎると呟くと、彼はいつも通り優しく微笑んでから今度は優しいキスをくれた
幸福はここにあるのだと知る
(幸せなのも狂うのも楽しいのももどかしいのも)(全部君のせい)


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お泊りした次の日の休日にブン太といちゃこらするという夢のようなリクエストを頂いたのですが、ブン太が一方的なだけな気がする。
やはり全然ご期待に沿えなかったなー…なんて。でも書くのはとんでもなく楽しかったです^^
リクエストありがとうございました。

(( そら様リクエスト夢||そら様のみお持ち帰り可 ))110407…→ 天宮
TITLE BY 群青三メートル手前様 艶色十題