「みかんて、こたつで食べると何でこんなおしいしいのだろうね」
「ばーか。こたつで食わなくたってうまいだろぃ」


みかんを口に放り込み私は息をつく。まさに極楽。この世の天国。

12月31日から1月1日にかけて真田家にお泊りをしようぜ的な計画を真田の知らない所で企てて数時間前に押しかけた私達(真田を除く全員)はさっきからずっとこたつでぬくぬくしっぱなしである。


「お前達たるんどるぞ。もう数時間そこに座りっぱなしではないか」
「なになに?あと数分で今年も終わりっていうのにこたつを出ろと」
「うわー真田鬼畜ー」
「酷いもんじゃのー」
「そういうことは言っておらんではないか。動かないにしてもせめて宿題に取り組んだりだな、」


どうせ宿題が残っているのだろう、とか余計な気を回していただいちゃって、私は表情を曇らせた。年越すのに宿題なんかやってられるかよ。


「たまには休息が必要だよ真田」
「お、幸村良いこと言うー。そうだよ。王者にも休息は必要」


にしてはだらけすぎだけどね。まあいいか。
ゴロンとその場に寝転がると、お腹に幸村が頭を乗せてきた。良いところに枕ができたとか言ってお腹を頭で思いきり押してくる。うぐ。みかん吐く吐く。やめれ。


「お…お前達しゃんとせんか!」
「おい、開けんなよさみい!」
「ちょっとーマジ鬼畜なんだけど真田のばーか」


真田が窓を開けたせいで冷気が中に吹き込んできて皆が大ブーイング。
早く閉めろと真田に文句を言うが真田は窓の外を見たまま動かないから蹴飛ばしてみた。


「な、何をする」
「黄昏れてないで閉めろ」
「まあ待て。雪が降っているのだ」
「へー。窓閉めて」
「…」


何だよその顔。ちゃんと反応してあげたじゃん。物足りないんすか。これ以上私にどうしろと。
私は真田を見てわざとらしくため息をついた後、隣でいつの間にか寝ていた仁王をゆさゆさと揺らす。


「えーちょっと仁王起きてー」
「…なん?」
「真田が雪がっせんしたいんだって」
「ほー」
「ぶは。雪合戦かよ真田っはははは!」
「そんな事言っておらぬわ!」
「今夜は寝かせないぜとか言うノリで雪合戦しちゃうんでしょ?」
「ぶはははっ」


丸井笑いすぎ。
何が彼のツボにハマったのか良く分からないけど笑いすぎてむせてる彼は何故かジャッカルの背中をばしばし叩いている。ジャッカル哀れ。てか丸井ってほんと良く分からない子だよね。


「遊ぶなら室内で遊ぼうよー」
「えー遊ぶー?例えばなんスか」
「花札とかさあ」


俺花札分からないよ、と幸村がぐりぐりと私のお腹を頭で圧迫。ちょ、だからみかん吐くってば。


「俺も花札知らないんスけど」
「あー大丈夫大丈夫。私も花札のやり方がよく分からないから」
「どこが大丈夫なんじゃ」
「というか面白さがよく分からないよね。ははっ」
「じゃあ最初から例えに上げんなよ」


だって花札しかメジャーな遊びが思い付かなかっ、…花札ってメジャー?
遊ぶのってむつかしいね、とかわけわかんないこと呟きながら私がみかんをもぐもぐしていると「じゃあ口だけ動かせばいいしりとりでもしようか」「どんだけ怠惰なんだよ」なんて会話が幸村達の間で繰り広げられていて、私は仁王の髪を弄りながら彼らの会話を聞き流す。


「おい、そうこうしている間に今年が終わるまで後10秒だぞ」


ふいに柳が口を開いて、私はガバッと起き上がる。お腹に頭を乗せていた幸村がどうした、と言わんばかりのめんどくさそうな顔で私を見た。


「おおおお前ら!残り10秒だぞ!」
「正しくは残り5秒」
「早く立て!皆!」
「何だよ」
「4」
「早く!」


のろのろと立ち上がった皆に、残り1秒になったらジャンプしてねと早口に言うと皆は超めんどくさそうな顔をしやがった。いいから飛べよ!


「1、」
「皆ジャンプだー!」
「0」


あけましておめでとー!とテレビの中のアナウンサーが叫ぶ。と、同時にどんと一斉に着地した皆は「で、何これ」と私を見る。


「ジャンプしたから今年が始まる瞬間私達地球上にいなかったんだよ。すごくね?」
「……うわーくっだらねー」
「黙れ丸井」
「ていうか地球に足がついてなかっただけで地球にはいたよ俺ら。馬鹿だなは」
「…っ幸村まで」


せっかく年初めにすんごいことしちゃったとか盛り上がると思ったなのに。うくっと涙を拭うと赤也が、つーか先輩、と口を開いた。何だよ。


「真田副部長ジャンプしてなかったッス」
「おいいい真田ああああ!!」
「くだらんことに付き合ってられるか!」
「くだらなくねえよ!どうしてくれちゃってんの真田!今お前と私達の友情に亀裂入ったよマジで」


真田のばかああとうずくまる私はぐすぐすと泣きはじめた。柳がぽんと私の頭を撫でる。柳だけだよ優しいのは!


「うーわー真田が泣かしたー」
「今年始めの泣かしじゃないか真田」
「いや今さっき君に泣かされたけどね幸村」


ツッコんだけどスルーされた私は更にいじけ始めたが、今年が始まったばかりなのにそんなにいじけるもんじゃない、と仁王にも慰められたので私は仕方なく立ち上がった。


「そうだね。初めくらい元気に行こう。ということで!」
「いうことで?」
「ハッピーバースデー!」
「…」
「…」
「…」
「ハッピーニューイヤー!」
「…あーあ」
「ああああ間違えたああああ!」


ガバッとしゃがみ込むと、初言い間違いーとか幸村がけたけた笑い出した。ああ死にたいいいい。何だよハッピーバースデーって馬鹿。


「は?てか素でそれ間違えるとか。は?マジねえッスよー」
「『マジねえ』とかお前誰に口聞いちゃってるわけ?おい馬鹿也ー」


赤也につかみ掛かる私は皆になだめられたが、そんなので私の怒りが収まると思ったか。
皆嫌いだー!と叫んだ私に丸井は苦笑した。



「結局全部ぐっだぐだだな」






ぜんぶかみさまのせい
(そう、全部。全部神様のせい。)(ええええー…)


( 年明けって結局こんなもん // 110501 )
12/31に踏んでいただいた確か、アレは22222HIT…?のリクエストです!
お正月ギャグネタとの事でしたが時期はずれにも程があるよね!ていうかお正月じゃないしね!リクエスト丸無視でなかなか書かないマイペースっぷりを直すには一度ぶっ飛ばされるがいいよ天宮。
ほんと遅くてすいませんでした!

リク:ももんがさんありがとうございました!ももんがさんに限りお持ち帰り可です。
TITLE BY 47.様 Rain man didn't look up to bird in the sky.