「あー…あー…」 聞いてるこっちの気が抜けるような腑抜けた声が教室に響いた。外でははらはらと雪が舞っている、ある冬の昼休みの事だ。丁度購買から戻ってきた俺と仁王は俺の席の前で佇むに近づく。おうどうした。彼女は俺達に気づくと、こちらを向いてまた腑抜けた声を発した。結局何が何だか分からなくて先程まで彼女が見つめていた先を見るとそこにはびしょびしょの俺の教科書。一瞬思考回路がショートした。 「おま…え?どうして?」 「どうもこうもないよ」 あーあーあーと悲しそうに目を伏せるの手に握られている紙コップを、俺はその時ようやく視界に捕らえた。俺の教科書が濡れている原因はこれか。ふざけんなよおいいい。隣では仁王があららー、なんて人事だもんふふふんみたいな声を漏らしたからムカついて、仁王が持ってたあんパンで頭を殴った。 「アンパンチ」 「何気に痛いあんパン」 「ならアンパンマン呼べ。アンパンマーン」 「イタい。ブン太イタい」 「黙れ」 それよりも、お前何してくれちゃってんだよ。零したんだろそれ。よりによって俺の教科書に。つか何したらこうなるの謝れし。はいつまでもずーんとしてたから反省はしてるんだと思う。仁王とかだったら適当な事言ってはぐらかすが、コイツはきっとそんな奴でない事くらい今までの付き合いの中で理解しているつもりだ。 「まあ、悪気はないだろうけどよ、」 「ちっくしょうお茶が」 「そっち。え、そっち」 「このお茶幸村君から貰ったのに」 「知らねえよ」 「謝れし」 「何でー。何で俺ー」 彼女の性格を取り違えてたよ俺。彼女の発言が明らかにおかしい事はその場にいる仁王も感じてるはずだ。試しに同意を求めてみたら、ああうんお茶はジャスミンがええわとか適当言ってんなマジしね。 「幸村君のジャスミンだよ」 「ならブン太がいけんわ」 「何で」 びしょびしょの教科書を摘むように持ち上げるとジャスミンが滴った。うわ丸井きったな、とが眉をしかめる。マジでシバくぞお前とか思った。つか5限目数学なのに教科書これじゃ見れないじゃんもうサボろうかな次。 「だいたいお前どうやったら俺の教科書こんななんの」 「冬だから教科書があったかいお茶が恋しそうだなと思った瞬間コケた」 「詫びろそして次は別の奴の頭に熱湯をやれ」 「誰にすればいい」 「仁王」 「よっしゃ分かった」 「やめろばか」 が次に仁王に熱湯をかける練習をしてた笑える。もう教科書はジャッカルにでも借りて来るかなとか寛大な心でを許してやることにして俺は教科書を借りに行く旅に出た。廊下に出た所で幸村君と目が合った。やあブン太とにこやかに挨拶される。相変わらず爽やか。言葉を返そうとしたらがひょこりと現れた。 「幸村君幸村君、あの美味しいお茶またちょうだい」 「良いけど、もう飲んだのさん」 「ううん、丸井がこんなの飲めるかって教科書にぶちまけた」 「えええーちょっとやめてそういうのー」 幸村君が本当なのブン太、とか静かに威圧感を放って、俺は反論したかったけど今気づいた、俺チキン。アンパンマン助けに来い、なんて願ったら仁王がのろりとやって来た。何とか弁解してくれねえかな仁王。アイコンタクトを計ったら親指をグッと出された。今の俺にはよし任せろ、と見える。よっしゃ行け仁王。 「ブン太が零した」 「マジ仁王しね」 青春中な僕らのくだらない話 (ブン太、こういう時こそアンパンマンじゃアンパンマーン)(ふざけんなてめえ覚えてろよ) ( 本気で付き合いを考えようと思った友 // 110613 ) しょうもない話が書きたくなった。馬鹿みたいな絡みが好き。 いつもとちょっと違った感じですよね。恋愛チックじゃない。 |