はああああ…盛大なため息に財前が私の方を振り返った。何そのめんどくさそうな顔。財前冷たい。でも良いんだ。今は財前のそんな顔も気にかからない。

頬杖をついて部室内でいちゃつくユウジと小春を一瞥した。あああムカつく。小春に嫉妬するのは間違ってるとは思うんだ。思うんだけど、ユウジは私の彼氏なわけだよ。それなのに…それを…ああもう!
活動日誌を書いていた私はその仕事を放棄して日誌の端にガリガリと落書きを始める。ただひたすらに『ユウジのばーか。ホーモ』とか書いてるだけなんだけど。


「…ホント、先輩アホっすわ」
「何よ。んな事知ってるわばか」


ユウジへの文句の隣に『財前のぶわぁか』と付け足したらすぐに消しゴムで消された。むむむ。
財前は「あんなのいつものことなんやし気にしなきゃええんすよ」って言ったけどそれが出来たらこんな苦労してないから。


「あのね財前。私は愛すのも良いけど、同じくらい愛されたいのよ」
「…はあ」


うわ、今めんどうな女やなって顔した。ありえなーい!私が真剣に悩んでるのにっ
頬を膨らまして指でコツコツと机を叩いてイライラを表現しつつ私は話を続ける。


「私はユウジが見えない」
「意味分からへんわ」
「おい敬語忘れるな」
「…すんません」


つまり、だよ。ユウジが私にどんな想いを抱いてるのか分からないの。だって2人の時も小春の話しかしないし、あんなにいちゃつかないし。私の事好きな?ねえ。みたいな。なんかもう付き合ってるのにアイツまでの距離が遠いっつーか。


「気になるなら聞けばええじゃないですか」
「聞いてるわよ。でも分からないからユウジが見えないって言ってるの」


見てなさい、と財前を一瞥してから私は息を吸って一言。


「ユウジ好きー」
「小春ー!!どこや小春ー!!」


…とまあこんな感じ。いくら呼び掛けても聞いてない。財前は無茶苦茶呆れた顔で私を見た。まるで「馬鹿やろ」と言いたげだ。まあ確かに最初は「ユウジ好きー」なんて言うの恥ずかしかったけど、今は聞いてないって気づいたからどんなデカイ声でも言える。そうなったのが愛故じゃないのが悲しい。


「いい?今私達の関係は私の片思いと一緒よ。一方通行なの。だから私からいくら愛を伝えても返ってくることはない」


日誌に道の絵を書いて、手前に自分の、道の向こうにユウジの似顔絵を描く。道には一方通行と書き足して。
近くで話を聞いていた白石は「日誌に落書きすな」って私に毒手をちらつかせたから慌てて落書きを消す。こここ、ころ、殺されるっ
そうこうしてるうちにユウジは外に出て行ったみたいで、外で微かに聞こえる小春コールを聞きながら私も真似しようかな、と呟いた。


「私が『ひかるー!』とか言いまくってたらユウジ嫉妬するかな?」
やらんといてください。キモいっすわ
「いーじゃんっひかるーひかるー!…て、来るわけないか」


私のラブコールも聞こえてなかったんだし。苦笑すると財前は疲れたように私の頭をバシッと叩いたから(後輩の癖に…っ)何か悲しくなって机に突っ伏した。するとその時部室のドアが開いて、私を見るなりユウジが「何いじけとんねん」なんて首を傾げた。


「あ、つか、お前ら最近一緒にいすぎなんや!」
「…はあ」
「これ俺の女やからな!取ったら承知せんで、財前」
「…取りませんて」
も浮気したら死なすど!」
「…」


ああ疲れるわ。とうなだれた財前は部室を出る前に私に耳打ちをした。


「ずいぶん入り組んどるみたいですけど、ちゃんと返ってくる道はあるみたいですよ」


ほな、とヒラヒラ手を振った財前は苦笑して部室から出て行った。一方通行じゃないんだ。良かった。ハハ、と笑うと「何やねんキモいわ」って言われたからお前に言われたくないって返す。


「…ユウジのばーか」
「何でやねん」
「ちょおこっち来て」


手招きするユウジがダラダラと歩いてきたから思い切り抱き着いてやった。ちょっと照れながら「ホンマ何やねんお前」と呟くユウジに「ユウジ好き」って言ったらハッて笑われた。


「んなこと知っとるわ。俺もやし」






貴方にたどりつくまでの地図
(…は、どうやら不要だったみたい)

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ユウジ書きやすかった!
初めて書いたけど無茶苦茶書きやすかった!でもユウジっぽくないなあ。
秋太、財前も出してやったぜ!感謝しろぃ。

100111
>>Kaho Amamiya

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