どこの世界に待ちに待ったクリスマスの当日が全てバイトで潰される女子高生がいんのよ。
ケッまぁここにいますけどね!
元はといえば、私のケーキ屋のバイトは昨日までのはずだったんだ。
ショーウインドーでキラキラと輝くケーキを見つめて私は思わずため息を漏らした。
両親というサンタから卒業した(というかさせられた)私は、寂しい事に彼氏もいない憐れな女子高生なわけだ。つまり下手したらプレゼントを貰えないままク
リスマスを終えることになるかもしれないという、とんでもない事態に自分が置かれている事に気づいた。
そんな私はクリスマスに自分へのプレゼントを買うためお金を稼ぐという虚しい計画に乗り出してバイトを始めた。…わけだが、昨日、辞めることを申し出るなり店長に「あと一日だけ出てちょうだい!」なんて頭を下げられてしまいしぶし
ぶここにいる。人手が足りないんだって。んなの知ったこっちゃねぇよ、…なんて言える人間だったら良かったのにね。
「すいません、これくださぁい」
「はい、ショートケーキですね」
営業スマイル全開の私は心の中で舌打ちのオンパレードだ。
あぁあ幸せそうな顔しやがって!
嬉しそうにケーキを受け取ったカップルに「ありがとうございました。またお越しください」と、もう何度言ったか分からない台詞を言って頭を下げた。
するとすぐにまたドアが開いた。ち、また客か。
大丈夫、あと2時間で私の仕事は終わりだ。我慢よ、。
顔を上げて営業スマイル。いらっしゃいま…、
「おぉ、さんじゃ」
「…仁王、雅治」
何でお前がここに…!
きっと馬鹿にしにきたに違いない。先日仁王にバイトの事を口を滑らせて話してしまった時、大分食いついてきたから、「クリスマスまで仕事ですか、ご苦労ですね。ははっ」ってきっと馬鹿にする機会を狙っていたんだ。
私はじとっと仁王を睨むと、敵意をむき出しにされてることに仁王は苦笑していた。
仁王と私は相性がすんごい悪い、と、勝手に私が決め付けている。だって私の心を読むんだもんコイツ。苦手だ。
「アンタもケーキ買うんだね」
「まぁな」
「で、どれにすんの?早くしてくれないかな。ただでさえ機嫌悪いっつーのに」
カウンターをカツカツと指で突いてイライラを表現すると仁王は肩をすくめて「冷たいのう」と苦笑した。
「さんはなんでそんなイライラしとんの?」
「さぁなんででしょう」
いいから早く注文しやがれ、と言うと「さんはどれがいい?」なんて聞いてきた。
私はタルトを指差す。「じゃあこれください」なんて私に微笑みかける仁王に一瞬どきっとしちゃった気がするが多分気のせい。有り得ないと首を振っていると、店の奥から店長が出てきた。
私達のやり取りをみるなり「まぁまぁ!」なんて近所のおばさんみたいな声をだす。
「ちゃんの彼氏?」
「違いま「そうです」
…は?
私の言葉が仁王によって掻き消された。
しかも何て言った?そうです?
「あらそうなのっ?」
「そうなんです」
「いや、店長違…」
「なんでこの人も持って帰っていいですか」
「はぁ!?」
持って帰るって何?!私売り物!?
ちょっと待って店長コイツ嘘つきなんです!なんて私の言葉なんて聞こえてないみたいで店長はけらけら笑って「いいわよ。ちゃん手伝わせちゃってゴメンね」と私に今までのバイト代を渡してくれた。
いや、家に帰れるのは嬉しいけど、あれ…私家に帰れるの?
仁王に腕を引かれるがままお店の外に出ると、外は真っ暗で雪がしんしんと降り積もっていた。
冷たい風が頬をかすめて、私は思わずさむ、と呟くと、仁王は私の手をぎゅっと握った。ちょっとびっくり。手を握られたことより、予想以上に仁王の手が冷たかったから。
でもその手の冷たさも、仁王に手を握られることも、不思議と不快ではなかった。
「…アンタ手、冷たいわね」
繋がれた手を見つめながら私はそう言うと仁王は振り返って「さんはあったかいんじゃの」なんて笑った。心臓が速くなった気がして私は慌てて目を逸らす。
「てか、なんで私を連れ出したのさ」
「バイトが嫌そうじゃったから」
なるほど、バレてたか。
まぁ連れ出してくれた事だけ感謝しよう、と仁王の背中を見つめていると急に仁王が買ったタルトの箱を突き出された。
「メリークリスマス、さん」
「…え、」
「好きなんじゃろ、タルト」
「…うん。…ありがとう」
いいとこあるじゃん。
タルトの箱を受け取って仁王に微笑むと、仁王は「そうそう」と口を開いた。
「俺、まだクリスマスプレゼント貰ってないなり」
「へー」
「バイトから連れ出したお礼も兼ねてちゅーしてくんしゃい」
「は、ちょ…」
えぇええ!何言ってんの!?正気か!
慌てて首を振ると、仁王はつまらなそうに「自分だけプレゼントずるいじゃろ」と呟いた。た、確かに…いや、でもちゅーって!
みるみる赤くなる私の事なんて知ってか知らずか仁王はそっと私の頬に触れた。
びくっと思わず目をつぶった私はキスに肯定したも同然だった。
君にキスされる3秒前
(それは多分君に惚れちゃう3秒前でもあるんだ)
--------
仁王はあまり書いたことがなかったので不安要素ありまくりでしたが、意外とすらすら書けた気がします。
そのわりにぐだぐだですけど。ヒロインがツンツンにつき仁王さんちょっとかわいそう。^p^
リクエストされた方へ!!↓↓
りゅみ様へ ここをクリックしてください
こんにちは!
りゅみ様はもしや以前、拍手LOGの赤也夢にコメントを下さった方でしょうか?
そうでしたらお久しぶりです。リクエストありがとうございます^^
またいつでもいらしてくださいね!
閉じる |
←BACK
|