最近立海で学校帰りに買い食い禁止令が出された。
誰だそんな禁止令出した奴。アタシがぶっ飛ばしてやる。だって部活帰りの疲れた体に甘いものは必須でしょ。いや甘いもの以外も必要だけど。
買い食いしたいなぁ…マック寄りたいなぁ…
買い食いが禁止であることに気を落としている私の足は重い。
そんな時嫌がらせかと思うほどでかでかと『肉まんピザまん半額!』なんて広告をさげているコンビニが私の目に留まった。よし、知らなかったことにして買い食い…は無理か。だって私は担任様直々に言われたんですもの。確か一緒に丸井も言われてた。
アイツなら迷わず買い食いするだろう。なら私だっていいはずだ。買い食いしよ。
進行方向をコンビニに向けスタスタと歩きだした私はお目当てのものを1つづつ買って袋を大事に抱えながらコンビニから出た…その瞬間、だった。
視界に赤い髪が目に入る。驚いてつい足を止めてしまった。
「…最悪」
私の知ってる限りでは赤い髪の奴は一人しかいない。
私の斜め前で立ち止まった丸井はこちらを凝視してきた。うわーめっちゃ見てるよどうしよう。
顔をそちらには向けず視界の端で赤い髪を捕らえていたから目は合っていないがあっちはガン見してきていることがアリアリと分かる。
ここはあれだよね、運動部の瞬発力を活かして逃げるしかないよね。
「あっれーさんじゃーん」
逃げようとした瞬間にこれだ。(いつもは『さん』付けじゃないのに)わざとらしい喋り方で私の名前を呼ぶ丸井の方には決して向かない。
「ヒト違イネー、アタシ違ウヨ」
「…」
今だ!丸井が唖然としてる間に逃げてしまえ!
丸井がいる方とは逆に足を踏み出して走り出そうとしたら目の前に丸井がサッと現れた。
「シカトで逃げるとか、そりゃねーだろぃ」
「うおっ…何だお前、瞬間移動能力でも習得したのか」
「伊達にテニス部レギュラーで天才って呼ばれてねぇから」
「それ自称じゃん」
てかちゃっかり掴んじゃってる手を離してくださいな。って、おいコンビニの袋も掴んでんじゃねぇよ。
離せ、と振り払おうとしたらまるで肩を組むようにガシッと手を回されて私はよろついた。やばいよコレ。はたから見たらヤクザに絡まれた可哀相な女の子じゃん。あー誰か通報してくんないかな。
「馴れ馴れしいんだよ。隣の席の分際で」
「おいおい偉そうな事言ってっけど立場考えた方がいいぜ?」
ニッと笑った丸井はコンビニの袋を取り上げて私の前でチラつかせた。
うわ最悪じゃねコイツ。
「何が望みですか」
ま、聞くまでもないけど。
「食いもん、俺にもわけてくれ」
「…だと思った…」
「一緒に注意受けた仲だろぃ?ちょっとくらい良いじゃん」
「人はそれを悪友という」
「何か言った?」
「別に」
肩に回された丸井の手を退かすと私はため息混じりに肉まんを丸井に差し出した。
丸井は満足そうに受け取ったのを見届けると私は背を向けて歩きだした。
「って、おいちょっと待てよ!」
「…まだ何か?」
「一緒に食おうぜ」
「却下」
「あそこの公園ベンチあるよな」
「聞けよ」
あぁ、だめだ。反論したって無駄なだけだ。食べ終わるまでの辛抱だ。大人しくしてよう。
私の腕を引っ張る丸井に気づかれないように小さくため息をついた。
公園内はあまり人がいなかった。
まぁもう夕暮れ時だもんね。
ベンチに座った丸井が自分の隣を叩いたから私はその隣に座って袋からピザまんを出した。
はむ、とピザまんを頬張る。あぁ美味しい。
「買い食いさいこー」
「ははっ分かる分かる」
ニコニコと笑う丸井に「買い食いはやっぱ禁止にすべきじゃないよね」と言うと「だな。俺買い食いできねーと死ぬもん」なんて返された。…て、何普通に会話しとんねーん!
……でも、
ちらっと隣の丸井を見て、ふっと笑みを零した。
悪い奴じゃないのは知ってるし、たまにはいいか。
前に向き直る私はさっきよりペースを落としてピザまんを食べていると、ふいにカシャ、なんて音が聞こえて、そちらを向くと丸井が私に携帯を構えていた。
ん?まさか写真撮った?
「…何」
「いや、これでしばらくにおごってもらえ、…いって!」
殴ることないだろぃ!?と文句を垂れる丸井をギロッと睨みつけた。
やっぱり悪い奴だ。最悪だ。弱みってか。何かあるたびにそれをちらつかせて黙らせる気だな、なんて奴。
「あと一発殴らせて。それで終わらせてあげる」
「何を!?俺の命!?」
ズサッと私から離れた丸井は「冗談だって!」なんて言ったあと「…ちょっと待受にしようかと、」と呟いた。なーんだ待受か…ん?はい!?待受!?
「ちょ、ダメダメ!」
「…何で?」
「何でって…恥ずかしいじゃん。もっといい待受探しな」
「平気平気。可愛いから」
「な…」
お前が平気でも私が平気じゃねーんだよ!
だいたい今何て言いました?可愛いから?正気か?
「可愛くない」
「可愛いと思うけど」
「眼科行け」
「俺目は正常だから。視力もいーし」
「つかそう言うのは好きな子に言うもんだから」
「おう。だから言った」
笑顔のまま、サラっと言ってのけたから私は危うく「へーそうなんだ」なんて返しそうになった。
ん、だから?だからって…、
しばらく固まっていると、丸井は私を不思議そうに見つめて再び口を開いた。
「好きなんだけど」
………はい?
「だから、が好きなんだけど」
「は俺のこと嫌い?」なんて聞かれて、私は黙り込んだ。
嫌いじゃない。嫌いじゃないけど好きでもない気がする。悪い奴じゃないことも、顔がカッコいいのもなんとなく分かる。
いや、でも。
「嫌いじゃない、けど」
「じゃぁ基本的には両想いじゃん」
「ええぇええ!?その理論全く分からない!!」
ふざけんなよってツッコむと、「ふざけてねえよ、超真面目」と本当にまっすぐ見つめ返されたから不覚にもどきっとしてしまった。
「付き合って」
丸井のその一言で、心臓がどきーんと更に速くなり出して、ここにい続けたらこのままどうにかなってしまう気がしたから、私は勢いよく立ち上がった。
「ごめん、ちょっと考えさせて…!」
「だめ」
「ええええ!?」
「俺が不安で夜寝れなくなるから」
「そんなの……そんなの知らないっつのーーーーー!」
ダッと走り出した私はもうダッシュで公園を出る。背中越しに丸井が「あ、逃げた!!」なんて声を上げたが止まる気はなかった。
転びそうになりながらとにかく走って家に向かった。そりゃぁもう、部長に褒め称えられるぐらいの速さだったに違いない。
「何だこれ何だこれ!!むちゃくちゃ顔が熱い!部活の試合のときより緊張してる!!一体どういうことだ!」
息を切らしながら大きな声で独り言。
赤くなった頬を隠すように玄関の前で私はしゃがみこんだ。
hell no!
(超ありえない!)
丸井君が良い返事を聞けるのは次の日のこと。
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やっぱりギャグは素晴らしいと思う。
すごく学生らしい感じ出るし、こんなに馬鹿やれるのは学生ぐらいだと思うから。
とんでもなくグダグダになりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました^^
そしてそしてリクエストしてくださった方もありがとうございました!!
101225
>>Kaho Amamiya
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