今日は待ちに待った木曜日。明日から三連休が始まって、しかもその三日間、家にはわたし以外誰もいない。連休中、両親と弟は北海道へ行くのだ。よく知らないけれど、弟の友達の家族と旅行に行くらしい。その友達の両親は、うちの両親の中学時代の同級生でもあるんだとかで。もちろんそれにわたしも誘われたんだけど、わたしは弟の友達とも面識がなければ、ましてやその両親とも面識なんてあるわけがない。家で一人で楽しく過ごす方が、利口だと考えて、今回はパスをした。両親は最初なかなかそれを了承したがらなかったけど、結果的に「なにかあったら赤也くんの家を頼るのよ」という条件つきで渋々了承してくれた。というわけで、今日からしあさってまで、わたしの夢の三日間ちょいが始まるというわけなのだ。さて、さっき両親と弟はもう出かけたことだし、一体なにをしよう。今日は口うるさいお父さんもお母さんもいないし、無駄に生意気な弟もいない。つまり、夜通しお菓子やジュースを飲み食いしながらゲームやパソコンをしていても、誰も怒らないということだ。三日分のポテチもカルピスも買ったし、準備は万端。ゲームもいいけど、今日はチャット仲間と徹夜でスカイプで通話するのもいいかも。?りあえず、まず面倒なことは先に済ませるとして、とっととお風呂に入ってこよう。みんなが通話で盛り上がり始めたときに、自分だけお風呂に抜けるのも嫌だし。そうと決まれば早速バスタイムだ。 「あ、スポンジ持ってくるの忘れた」 脱衣所に来て、お風呂に入ろうとしたとき、自分が体を洗うスポンジを忘れていることに気が付いた。わたしはいつも体を洗うとき、スポンジがないと洗えない人間なので、慌てて取りに戻ることにする。ちなみに今は全裸。だけど取りに行くためにわざわざ服を着なくていいのも、家に一人のいいところだ。わたしは脱衣所の扉をそっとスライドさせた。 「赤也!」 「…」 「ちょっと赤也、聞いてるの!?」 「うわっ!な、なんだよ母さん」 「アンタ、雑誌ばっか読んでないでちょっとは手伝いなさい。」 「あー?別にいいじゃ…」 「よくありません。ちょっとこれ、ちゃんのところに持ってってくれる?お惣菜余ったから」 「は?なんで俺が」 「今日ちゃんご両親いなくて一人なのよ。ほら、わかったらさっさと行く!」 「は…うわ、わかったから押すなって!」 ああ、めんどくせェ。せっかくいいところだったのによ…。つーか、なんで一人なんだよ。意味わかんね。とりあえず母さんからもらった惣菜のパックを手に、の家のインターホンを一回押してみる。反応、なし。寝てんのか、アイツ…?そう思って、ドアの取っ手に手をかけてみると、いとも簡単に開いてしまった。うわ、鍵かけてねえのかよ…。無用心すぎるだろ、アイツ。もう夜遅いのに。一応一言「入るぞー?」と声をかけて、の家に入る。もちろん鍵をかけておくのも忘れずに。とりあえずとっととこれを届けて、家に戻ってジャンプの続きを読もう。そう思って家に入ってみるけれど、「ー、どこだー?」とか声をかけながらでも一向にから反応はなかった。部屋か…?そう思いつつもまずリビングを覗いてみる。すると。 「え」 「あ」 がいた。 全裸で。 俺、絶句。 「うわっ赤也なんでここに!?鍵は!?」 「バッ、バカ母さんがに惣菜作ったつーから届けに来たんだよ!っつか鍵あいてたぞ!ってそうじゃなくてお前まず服着やがれえええぇぇえええ!!!!!!」 「あ、ヤベッ」 ヤベッじゃねえよ。バカか。こいつ貞操観念ねえのかよ。 「とっ、ととととりあえず届けたからな!じゃあな!服着ろよ!風邪ひくぞ!」 「う、うんありがとう赤也!じゃあね!」 ありがとうとか言うな。 とりあえず慌てて部屋を出た俺は、が風呂場に戻ったらしき音を確認すると、その場にしゃがみこんだ。もしかしたらもう俺がいないと思ってまた全裸の(…)が出てくるかもしんねぇけど、こんな格好(…)のまま自分ん家に戻れねえし、外に出てるのもなんか、やだな…。 やべえ。心臓がバクバク言ってる。当たり前だ。そりゃ すきなおんなの 全裸なんか見ちまった日には、ぶっちゃけしっかり下半身も反応してしまっている。そもそも俺、姉貴と母さん以外のハダカ見たの初めてだし…。それもちっせー頃。…いやのハダカもちいせえ頃なら見たことあるのか。一緒にお風呂入ってたらしいしな…。覚えてねえけど。…つーか、あいつ結構胸でかいんだな…。乳首とかピンク色だったし…。…ってしっかりの裸見てんじゃねえかあああ!俺!!つ、つうか、彼女でもない(そもそもまだ中学生)女の裸タダで見ていいのか…!? ハッ…!金…!!!!! 「…ふぅ」 一通りシャワーを浴びて、湯船にもつかった後、バスローブを着てリビングに戻る。…にしても、さっきはびっくりしたなあ。だっていきなり、 すきなおとこのこ にハダカ見られるなんて。赤也、名前に恥じぬぐらい、タコみたいに顔真っ赤にしてたし。…思い出しただけで、こっちまで赤くなってきそう。 髪を軽くタオルで乾かしながら、ふとテーブルに目を向けると、そこには赤也のお母さんが作ったと思われるお惣菜。と、その横に、…通帳? 「金ならもってけ」 と滅茶苦茶走り書きな汚い字で書かれたメモ帳が一枚添えられていた。…ああ見えてほんとに律儀なヤツ。さっきだって、さり気に風邪の心配までしてくれたし。一応バスローブの上にポンチョを羽織って、玄関を開けてみると、思ったとおり赤也が外で未だに顔を真っ赤にしながらうずくまっていた。 「赤也、」 「うわ、、なんでおま」 赤也がびっくりした顔して振り返るのと同時に、思いっきりぎゅって抱きつかせていただく。久しぶりに触れるもじゃもじゃした髪がふわふわしてて気持ちいい。 「赤也、責任とるなら、お金じゃなくてお嫁さんにしてほしいなあ」 少しの躊躇いの後、赤也は、 「おう!」 と言いながら、わたしの背中に手をまわして、強く抱きしめてくれたのです。 Please give me not money but you
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