▽IN立海マネジ 海と山のLOVE PASSION! 「何?天乃がいないだと?」 跡部の言葉に、俺はゆっくりと頷いた。たちまち周りは重苦しい雰囲気に包まれる。 選手育成委員会が主催するテニス合宿に呼ばれた俺達は、目的地の島に着く途中で船が座礁し、遭難してしまった。先生方も見当たらない中、現在はとりあえず部員の人数確認を行い、どの学校にも欠員がいないかのように思われた。しかし、表情を沈ませた赤也がよろよろとやって来て言ったのだ。「部長、天乃先輩だけがいません」 身勝手な行動をする比嘉のメンバーを押さえつけ、皆で手分けして天乃を探してはみたものの、彼女の姿は疎か、漂着したような痕跡すらない。 「…俺とした事がなんてザマだ」 ぐしゃりと頭をおさえた跡部はいつもの冷静さを欠いているように感じられる。それはもちろん天乃だけがいないからであるだろうが、本当にそれだけなのだろうか。まあ今はさして重要な事ではない。俺はぐるりと部員達を見回し、昨日天乃と同じボートに乗ったのは誰であることを問うた。すると、申し訳なさそうにジャッカルの手がゆるゆると上がる。 「ジャッカル先輩、天乃先輩の事見てなかったんスか!」 「赤也、あんな状況だったのだ。ジャッカルとて自分の身を守るのに精一杯だったのだろう。あまり責めてやるな」 「…真田副部長…」 でも、と紡がれかけた言葉を、赤也は首を振って飲み込んだ。誰のせいでも無いこと赤也は分かっている。ジャッカルはすまねぇ…と泣きそうな声で目を伏せた。 「泣く事はないよ。天乃はある意味最強だからね。きっと見つかる」 「そうだな。潮の流れからして、ここにいないのならば、あの島に流れ着いている確率は高い」 柳のさした先に、大きな島が見えた。先生方もきっとあそこにいるに違いない。 「どーでも良いけどよ、お前らいつまで傷の舐め合いやってるさー」 「そうですね。貴方達は海を甘く見ているようですし。確かに潮の流れからしてあの島にいる可能性はありますが、最悪の場合の事も考えるべきではないですかね」 「『それ』を考えるのは、あの島に天乃がいないと決まってからでも遅くはないよ」 よく突っ掛かってくる輩だと、平古場と木手を見据える。跡部が向こうの島に上陸するぞとオールを手に持った。それにしてもどうして天乃だけがはぐれてしまったのか。ジャッカルの話によれば、避難する時、彼女は部屋で寝ていたという。彼が慌てて起こせば、天乃はうっすらと目を開いたそうで、そのまま押し込むようにボートに乗せたのだとか。 天乃の事だ、人見知りが激しいから今回の合宿、そうとうストレスになっているのだろう。彼女のストレスは自身で口にださずとも睡眠によく現れる。 そこでジャッカルが目を離した隙に海水を飲んだりして気絶という形で完全に意識を手放し、そのまま海に落ちたに違いない。 「…天乃先輩」 微かに呟かれたその言葉に、俺は赤也の肩を叩いた。天乃はいるよ。そんな気がする。微笑んだが、赤也はまだ不安そうに視線を落としていた。 「…そんなの、何の保障にもならないッスよ」 「赤也」 「…」 「俺が一度でも間違った事を言った事があるかい」 ドキマネ LovePassion A ( つぐみと彩夏を出し忘れたとか、そういうんじゃないからね! // 120205 ) 彼女たちは会話に出てこなかっただけです。その場にはいるということにしておいてください。あくまでヒロインはマネジだから、彼女たちに目立ってもらっては困るんです。という言い訳。 |