ひだまり番外編( 修学旅行 )



9月某日。
立海大附属中2年の私達はドイツに修学旅行に来ている。一日目のドイツ観光も終了し、疲れが溜まった身体をベッドに投げ出す。もうとっくに消灯時間は過ぎているので、私は寝に入る気満々でいたのだが、私と同じ部屋の女の子達はそれを許してはくれなかった。

この時間帯のやることと言えばガールズトークしかない。極端に仲の良い友達とは別の部屋になってしまって話に入りづらいのだが、早速恋ばなを始めた女の子達の輪に私は強制参加させられた。

しかし王者立海のマネージャーである私にも限界というものがあって、もうそろそろリタイアを申告したい。


「…あの、大変言いにくいのですが私、そろそろ寝、」
「あたしさあ、実は丸井君が好きなんだよね」
「えええええ!」
「天乃ちゃん、しーっ」
「ああ…さーせん」

目覚めちゃったよ。つかぶっちゃけましたね。えっと、名前は何でしたっけ。確か皆にリーコとか言われてたな。いきなりどうしたんだ。いや、まあ恋ばなしてたんだし、分かるけどさ、分かるけど、よりによって丸井ー?いやいやナイだろ。ナイナイ。


「そういや天乃ちゃんて、丸井君と仲良かったよね」
「え…えー…?悪いよ。てか丸井はやめとけ、丸井は」
「えー何でー?かっこいいじゃん」


ねー、とリーコちゃんが言うと周りが同調する。まあかっこいい所がないって言ったら嘘になるようなならないような。けど丸井にリーコちゃんには勿体ないよ。リーコちゃんなら例えば…柳生とか?紳士が似合うから絶対。


「まあ柳生君もかっこいいよ。でもね、丸井君も良い所沢山あるよ。いつも笑顔だし、皆に優しいじゃん」
「いや、優しくはないぞ、優しくは」
「近すぎて見えない事もあるよ?」


ちく、と胸が痛んだ。まあ、そうかもしれないけど。彼女は顔をほころばせながら丸井について話だすから何だかもやもやしてきて、抱えていた枕を更に強く握りしめた。どうしたんだ私。


「あたし、前見たことあるんだ。丸井君が一人で放課後練習してるとこ」
「…」
「いつもは何でも出来てるってイメージが強いけどね、 その裏では人の何倍もの努力してて、かっこいいなって」


この子は分かってる。そこら辺にいるファンとは違う。ちゃんと丸井を見てる。
視線を落とすと、周りの女の子が不思議そうに私を見たから慌てて作り笑いを浮かべた。あーやっぱり先に寝ちゃえば良かったな。
心の中でそう呟くと、リーコちゃんが私の手を握った。天乃ちゃんは丸井君と付き合ってないんだよね?なんて。無論、頷く。


「なら、…なら協力して!」
「ま…じですか」
「うん!あたし、この修学旅行をきっかけに丸井君ともっと仲良くなりたいし、
…告白したいもんっ」


私に駄目だなんて言う資格はない。何で駄目かも自分で理解してないんだから。へらりと笑って見せた私は良いよと答えるなり、彼女の手の力が強くなった。


「ありがと!あたし、頑張るね!」




…何してんだ私。






捻くれロマンス@


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久々に拍手を更新。MEMOにひだまりの体育祭の話を書いたら、修学旅行の話しも書いて欲しいといわれたのでここで。

>>天宮 かほ110613