私にとって冬のすんごく寒い日に登下校する程辛い事はない。
「さむい」
私は巻いているマフラーに顔をうずめ、くぐもった声でそう呟くとブン太は自分の冷たい手を私の頬にぺたっとつけた。
さむいっちゅーに!
私はふくれてブン太の手から逃げると、ブン太はつまらなそうな顔をしてから口を開く。
「だから早く帰ってんだぜ?」
「そうだけど。…うーさっむ」
鼻を啜り、白い息を吐く。
何だか白い息を見ていたら、余計寒くなった気がして、マフラーをしっかりと巻きなおした。
そんな私を見てか、ブン太はそばにあった自動販売機を指差す。
「自販で何か買ってきてやろうか、あったかいの」
その言葉に私は一瞬固まる。
そしてすぐさま首を横に振った。
「…え、あ。い、いいよいいよ!ほんと大丈夫!」
「…何でそんな全力で拒否んだよ」
「だってブン太が奢るとか珍し過ぎて怖かった」
「あのなぁ」
じゃぁ買ってやんないかんな、なんて言うブン太の言葉に惜しいことをしたかな、なんて思いながら「大丈夫」と答えた私は友達が休み時間に言っていたことを冗談めかして言ってみた。
「飲み物より私は人肌が恋しいのさ」
「もブン太君に言ってみれば?」と言われて、いつ言おうかなと伺っていた言葉でもある。
最近彼氏が出来始めた皆(私は前からブン太と付き合ってたけど)の中でこういうことを言って彼氏がどんな反応を見せるかというのを実験するのが流行っているんだとか。
ブン太はそんなに反応しない気がするんだけどなぁ。
「ははっそっか。じゃあほら、手、出せ」
やっぱり想像通りの反応だった。
ブン太の言葉に制服の袖に隠れて外に出ることを億劫がっていた手が、すんなりと出てくる。
ブン太は私の手を掴んで自分のポケットに入れた。
何でこんなに暖かいんだろ。あ、カイロ入ってるし。
暖かいからいいけど。
「…あったかい」
「だろぃ?」
にこっと笑うブン太の顔が可愛くて、何かちょっと悔しい。
やっぱり女顔だなぁなんて思いながら「カイロが暖かい」って意地悪を言ってみた。
「それは言わなくていいっつの」
「あはは」
むすっとしたブン太をににこりと微笑むとブン太もすぐに笑顔になる。
「ブン太ってかわいいよね」なんて調子に乗って言ったら頬をつねられた。
寒いからつねられるだけなのにいつもの倍、痛く感じる。
ブン太のポケットに入れていない左手で頬をさすりながら「本当のことなのになぁ」なんてぶつぶつ呟いていると、やっと私の家が見えた。
「やーっとん家か」
疲れたようにため息をついて呟くブン太を見て私は苦笑した。
ブン太の家はまだ先だから、ため息が出るのも分かる。
私は家の鍵を取り出しながら、まるで独り言のように呟いてみた。
「別に上がってっても良いけど」
私がそう言うとそれを聞き逃すはずがないブン太の顔がガバッと上がった。
「いいの!?じゃ、遠慮無く」
「はは、どーぞどーぞ」
本当に遠慮がないな、と私より先にずかずかと家に入っていくブン太の後姿を見ながら私は一人ほくそ笑んだ。
「やっぱり家も寒いね」
「そりゃ、何もつけてないからな」
家の中は外よりはましなものの、やっぱり寒くて、早く暖房をつけようと暖房のリモコンを探す。
「リモコンー、どこー?」
本当にどこにやったっけ、と首をかしげていると、ふいにブン太が口を開いた。
「、ちょい待ち」
「ん?」
手招きされたからとてとてとブン太の方に歩いていくと、あごに手を当てて何かを考えていたらしいブン太は顔を上げた。
「、人肌が恋しいって言ったよな」
「…まぁ、言ったけど?」
それが何?
そういう私にブン太はにやりと笑った。
な、何。さっきのは冗談だよ!?
「じゃあ俺があっためてやるから、こっちこい」
「…え、えぇえ!?い、いいよいいよ!」
急に顔が熱くなった私は後ずさり。
ななな何を言い出すんだブン太!
「拒否権なーし」
「えぇー…いやだって、その、…ブン太、」
「何、嫌なわけ?」
「うわ、そういうのってずる…」
嫌なわけないけど、そんなわけないけど。
絶対赤くなっている頬を押さえながらたじたじとしていると、ブン太はふっと微笑んだ。
「ほら、来いよ」
私が間違ってました。ブン太はやっぱりかっこいいです。
人肌が
恋しいです企画01
(誰か、彼がこんなにかっこいい理由を教えてください。)
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なんか企画とか言っちゃってますけど、需要なかったらやめます。ははっ←
いや、すんごく寒かった日に学校で呟いてからなんだかこの台詞が気に入りました。
だからちょっと書いてみちゃったノリです。
友達に引かれましたけどね。
予定ではあと赤也ぐらい書きたいなぁなんて。
そういやこっちの拍手の更新は久々やねぇ。
101101